大型海洋生物との衝突、防止手段に限界 ジェットフォイル事故から半月

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大型海洋生物とみられる水中浮遊物と接触事故を起こした佐渡汽船のジェットフォイル「ぎんが」

 新潟県佐渡市姫崎沖を航行中の佐渡汽船のジェットフォイル「ぎんが」が水中浮遊物と衝突し、乗客ら80人が重軽傷を負った事故から半月が過ぎた。状況から衝突したのはクジラなどの大型海洋生物とみられる。事故を防ぐ手段として、クジラに船の接近を知らせる水中スピーカーなどの装置があるが、専門家からは限界を指摘する声が上がっている。

 日本海の生物に詳しい上越市立水族博物館うみがたりの池口新一郎副館長は、衝突したのはクジラとみる。「体長約2メートルのイルカだとぶつかった衝撃に負け、船へのダメージは少ない。マンボウやウミガメも考えられるが、時期が違う」との見方を示す。

 日本海にいるクジラのうち、最も数が多いのはミンククジラだ。体長は最大で約8メートル、重さ2~3トン。春から夏にかけ、えさを求めて北上する。国際水産資源研究所鯨類資源グループ(横浜市)の吉田英可(ひでよし)グループ長は「日本海でミンク、ナガスクジラの数が増えている可能性がある」と指摘する。

 船とクジラの衝突事故は全国で過去に何回もあった。回避に有効と考えられるのが水中スピーカーだ。開発・生産する川崎重工業(東京)によると、ディーゼル音と金属音を合成した音などを発生させて船の接近を知らせるという。ジェットフォイルは海面から船底を浮かせて航行するため騒音が少なく、装着すると一定の効果が期待できる。

 佐渡汽船のジェットフォイルは同様のタイプのスピーカーを備えていた。小川健社長は11日の記者会見で「導入した1997年以降、事故は67%減っている」と述べた。ただ、川崎重工業の担当者は「クジラの生態は明らかではないことが多く、どの音が有効かは分かっていない」と説明。吉田氏も「音が発生する方向によっては、クジラに聞こえなかったのかもしれない」と限界を指摘する。

 船の周りのクジラなどの存在を確認するソナー(探知機)は、比較的波が安定している太平洋を航行するジェットフォイルに搭載されることが多いが、ぎんがは装備していなかった。同じく日本海で運行する隠岐汽船(島根県)もジェットフォイルにソナーを付けていないという。同社の担当者は「波がある日本海ではソナーの効果は限定的」とし、「目視を強化した方がいい」と話す。ただ、別の船会社の担当者は「全く意味がないわけではない」と見解は分かれる。

 今回はシートベルトを締めていても、衝撃で腰の骨を折るなどけがをした人が多かった。

 ジェットフォイルなど多くの超高速船は腰回りに巻く「2点式」が主流だ。九州の船会社の担当者は「2点式も国の基準を満たすが、3点式はより安全。事故を受けて佐渡汽船が3点式にすれば各社も検討しなければならない」と佐渡汽船の対応を注視している。

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 <ジェットフォイル衝突事故>9日正午すぎ、新潟港を出発した佐渡汽船のジェットフォイル「ぎんが」が佐渡市姫崎から東北東に約5キロの海域で大型海洋生物とみられる物体と衝突した。現場は同社が設けた「減速区間」の外だった。佐渡汽船のジェットフォイル「ぎんが」に乗船していた125人中80人が重軽傷を負った。船尾に横17センチ、縦3センチの亀裂が入り、水中翼の根元部分が損傷した。