建設中の「東京駅」を活写 横須賀で“お宝”写真を発見

建設中の東京駅の姿を収めた写真(横須賀市提供)

 明治後期に建設中だった東京駅の姿を収めた写真の原本が、横須賀市西行政センター(同市長坂)で発見された。市によると、少なくとも30年以上、地下倉庫に眠っていた。撮影目的や保管の経緯など謎は多いが、駅舎の鉄骨部分が分かる貴重な1枚。国内に現存する原本は数枚とみられ、市は市自然・人文博物館(同市深田台)の所蔵品として保管し、展示など活用方法を検討する。

 市によると、写真は1911(明治44)年7月19日に都内の写真業者が撮影。縦20センチ、横53センチのモノクロで、東京駅の当時の名称だった「中央停車場」などと記載された台紙に貼付されている。

 鉄骨工事の終了時期に撮影され、その一本一本がはっきりと写っているのが特徴。皇居側から見た駅舎全体に加え、周囲の人々の姿も小さく収められており、やぐらを組んで高い位置から撮ったとみられる。

 撮影目的などは分かっていないが、同館の菊地勝広学芸員は「当時はレンズ一つで家が建つほどの金額だったと聞く。高画質なカメラと大掛かりな撮影でかなりの費用がかかったのではないか」と話す。

 発見後に市が調査したところ、この他の原本は2008年に都内の美術館で展示されていたことなどが確認できたが、所有者などは不明。鉄骨部分がよく分かるため、鉄道博物館(さいたま市)所蔵の複製は、12年に完成した東京駅復元工事の際に参考にされた。

 横須賀の写真は、17年2月に行政センターの地下倉庫を整理中に発見。行事で使う看板などの保管場所として利用されており、奥側の棚の一番上に新聞紙に包まれて置かれていた。1986年に新設された行政センターの前身・西部支所時代に寄贈されたとみられるが、詳細は判然としない。

 市は5日に発表。上地克明市長は「日本の黎明(れいめい)期をしのばせる写真が出てきたことはうれしい」などと話した。

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