4度目の挑戦で大賞受賞…第7回カーデザインコンテスト表彰式[訂正]

©株式会社イード

カーデザイン大賞(最優秀賞)『旅路-Tabiji-』 岩片智君 東京都立工芸高等学校2年

3月25日、公益社団法人自動車技術会デザイン部門委員会が主催する「第7回カーデザインコンテスト」の表彰式が開催され、岩片智さん(東京都立工芸高等学校2年)がカーデザイン大賞を獲得した。

◆世界をリードするすごいカーデザイナー誕生に向けて

このカーデザインコンテストは、日本の二輪四輪関連業界各社のデザイナー、およびデザインを教えている大学の先生などが、将来のカーデザイナー育成のために実施している活動だ。

デザイン部門委員会人材育成ワーキンググループリーダー、トヨタ自動車の山和紀久子氏は、「100年に1度といわれるクルマ社会の大きな変革期の中、未来を創造できるデザイナーの育成はますます重要になってきている」とこの活動の意義について語る。

そもそもこの活動の成り立ちは、次世代カーデザイナーの人材育成プログラムの一環とし、中高生に焦点を当て、「自分は何をやりたいのか、どんな仕事をしていきたいのかを考え始める時期に、想像する楽しさへの気づきから成長・支援するカーデザインに挑戦というホームページを作成した」と説明。

このホームページは“学習、進路、コンテスト”という3つの扉があり、これらの相乗効果により自分で学べる機会を提供。「この活動を通じてカーデザインという仕事に興味を持ってもらい成長を促し、最終的には世界をリードするすごいカーデザイナーの誕生につなげていきたいと考えている」と話す。

◆10年後の暮らしを楽しくする乗り物がテーマ

第7回カーデザインコンテストのテーマは、“10年後の暮らしを楽しくする乗り物”とし、応募資格はA部門を中学生、B部門は高校生、高専生の1年生から3年生まで。応募期間は2018年11月1日から2019年1月20日までの約3カ月、応募用紙、スケッチ、作品説明の3点セットでの応募とされた。

応募作品の中からトータルで最も優れた作品であるカーデザイン大賞1名。次にイメージや機能が最も優れ、絵に表現されているカーデザイン賞。工学的な工夫に優れた作品に贈られるダヴィンチ賞(A、B部門それぞれ1名)、想像性に優れた審査員特別賞1名が入賞作品として、さらに20数名が佳作となる。

第7回の応募総数は386件で、昨年の1.5倍と過去最高だ。「新たに授業で取り入れた学校も増え、この取り組みが少しずつ広がりを見せていることに感謝している」と山和氏はコメント。

同時に、「個人で応募してくる生徒の力も大きい」という。「自分で見つけて自分で応募してくる子供達の力はとても強い。従って我々としては学校の先生からも声をかけて欲しいし、そういう意思のある子供達自身も(このホームページを)見つけて欲しいので、その両方に力を入れていきたい」と話す。一方で、「中学生の子供達の応募がなかなか伸びない。高校生は授業で取り組んでいくことが多くなってきているので、今後はいかに中学生の子供達を増やしていくかが課題だ」と述べた。

◆アイディアに優れた受賞作品群

今回も表彰式に伴い、受賞作品に対しての講評が行われたので、受賞作品と共に紹介する。講評はデザイン振興ワーキンググループリーダーの本田技術研究所の田村健司氏が行った。

・カーデザイン大賞(最優秀賞)

『旅路-Tabiji-』 岩片智君 東京都立工芸高等学校2年

2度の佳作と昨年のカーデザイン賞を経て大賞を受賞。作品は確実に進歩している。

洗練された日本の雰囲気をすごく表現している。カラーリングと扇形のシルエットにより日本を象徴している。しかも単なる扇形ではなく、リアに斜めのアクセントラインを入れることでより強調。サイドの画面も四角ではなく丸型で、それも日本の国旗をイメージしている印象だ。

現在の社会の変化を実によく捉えており、インバウンドツーリズムの状況を踏まえ、そこも対象としてデザインされている。日本が今後グローバル化していく中で本当に素晴らしい大賞に相応しい提案だ。

・審査員特別賞

『-kcal マイナスカロリー』 キム・ジョンミン君 東京韓国学校2年

自分で電気を作ってその電気で走るモビリティなので、究極のゼロエミッションモビリティといえる。電気を生み出すためのエアロバイクにより一生懸命漕いで健康的にもなり、その電気によって移動する。環境にも優しくいまの社会問題を一気に解決するような素晴らしい提案だ。

スタイリングデザインも、前後ではなくサイドバイサイドの二輪のアイディアとなっており、なかなか見ることのない良いアイディアだ。

環境にもよく健康にも良いという切り口で、すぐにでも作ってみたいと思わせる。

・カーデザイン賞

A部門:『Storm』 魚住拓磨君 岡山白陵中学校2年

クルマ好きが素直にドキドキするデザイン提案だ。フォーミュラーカーのようにオープンホイールで迫力のあるスタイリングなど、ぱっと見て運転がものすごく楽しそう、乗ってみたいというイメージがデザインにすごく表現されている。

リアウイングも単にまっすぐな板ではなく、リアデザインに沿わせ、かつ空力も意識した特徴的な造形だ。さらにディテールにもこだわっており、ヘッドライトがウインカーになるような工夫もなされている。

低く構えたフロントノーズとワイドトレッド、ショートホイールベースなどはクルマを運転する喜びを表現しており、そういったことがクルマ好きに刺さることを、ものすごくよくわかってデザインされている。

B部門:『南極救助隊2029 サーチドローン搭載車』 林侑太朗君 三重県立飯野高等学校2年

地球規模、南極を探検するという冒険心を駆り立てられる提案で、審査員一同の心を捉えた作品。見てすぐにわかる雰囲気のあるスケッチはとても上手。世界観を表現するこのスケッチはプロ顔負けである。

雪上を走るためのクローラーは、かなり凝っており雪上をどのように走るかまで考えられている。遭難者を探すためのサーチドローンはルーフから打ち上げられるようになっており、男心をくすぐるような装備だ。

このような極地の活動をするための工夫と思われるツートンカラーのカラーリングなど素晴らしい提案が多数盛り込まれている。もしこのクルマが南極大陸に配備されたら我々もそのうち南極に気軽に旅行に行けるような気持ちにさせてくれる。

・ダヴィンチ賞

A部門:『ドクターカー Doctor car』 長尾美雨さん 神戸市立広陵中学校1年

この作品はアイディアが素晴らしい。これから日本が直面化する超高齢化社会において、特に過疎化となる山間部や病院がない地域に“行く”病院をイメージしたもの。一見救急車に見えるが、実は窓がなくこれが大きな特徴になっている。自動運転などのこれからの技術によりどんどん実現できる形になっている。

車内も細部にまで考えられており、薬剤師の代わりにAIロボットがいるなど、かなり機能的で、これらもデザインのひとつに取り込まれている。

また、全自動の車椅子も室内に装備されており、足の悪い高齢者を自動で迎えに行くことも可能だ。真剣にその時々のシーンを考えて絵に表してデザインされている。これからの大きく変化していく日本の社会に対してものすごく好感の持てる提案だ。

B部門:『Free crawler 人を包み込むバリアフリーの車椅子』 滝川麻友さん お茶の水女子大学付属高等学校2年

タイヤでもキャタピラのようなクローラーもない、ダンパーの伸縮を使って駆動する新しいアイディアにはびっくりした。我々のような健常者は普段はあまり気づかないが、電車に乗る時のちょっとした段差などで車椅子の方はかなり苦労することがある。しかしこのアイディアはそういったシーンでも難なく移動できるようなシステムになるだろう。もちろん階段や段差なども簡単に乗り越えられるようになっている。これを必要とする人が自由に移動できるアイディアである。

球体のデザイン形状で、よく見ると前面にドアがついているがその形もかなり凝ったもので、細かいところまでデザインされている。しかも球体というデザインは、周りに威圧感を与えないので、かなり親しみの持てるデザインだ。

アイディアのひとつひとつに受賞者の優しさが伝わってくる素晴らしい提案だ。

◆4回目の挑戦で大賞受賞

前述のとおり、今年大賞を受賞した岩片君は昨年のカーデザイン賞受賞者だった。しかし彼のコンテストへの挑戦は今年で4回目である。「中学生時代に1回目と2回目で佳作に入選していた。我々は無記名で審査しているので、たまたまの結果とはなるが、こうして作品を見るといかに努力し成長してきたかがわかる。こうした成長のあり方そのものが我々委員会にとって本当に喜びだ」と山和氏はコメントする。

また、「このコンテストには何度でも挑戦してもらってよい。何回も挑戦して、今回のように上の賞が取れることもあればそうならないこともあるだろう。しかし大事なことはいまの自分に対してチャレンジし続けること、それが成長につながる」とその思いを述べるとともに、「今年の応募数がこれだけ増えたのは、自分に挑戦するという意欲のある生徒がこのコンテストを見つけてくれたこと、そしてこの子だったら挑戦するのではないかと声をかけ、成長の糧を見守る保護者や学校の先生の眼差しのおかげだ。我々委員会ができることは限られているかもしれないが、そうした眼差しのひとつでありたいと」と語った。

◆大事なのは何が作りたいか、何を世の中に提供したいか

デザイン部門委員会委員長のヤマハ発動機、田中昭彦氏は今回の開催にあたり、「現在自動車産業を取り巻く技術や環境は大きく変化してきている。それに対して、我々はこの変化を追いかけていくだけではなく、その先にどんなものがあるかを想像しながら、実現するためにどうやって取り組んでいくかを考えていくことがとても大切だ。いまモビリティデザインというのはただ形を格好良くするとかだけではなく、世の中にどんな価値を作っていけるのか、そこまで考えていかなければならない時代になってきた」と現状を話す。

そのうえで、「受賞された方を含めて386件の真剣に将来を考えた提案をもらって、本当に嬉しい思いだ。今回もスケッチで提案をしてもらったが、このスケッチとは、考えていることや将来の夢を色々な人に伝える最も具体的な手段で、それにより、色々な人が理解を示し、どんどん技術が進んでいく。実はこれが我々の狙っていることだ。従って、スケッチの表現力が素晴らしいというのは非常に大切なことで、その表現力はデザインだけではなく色々な仕事の中でも重要になる」とその重要性を語る。

ただし、「表現力だけではなく、一番大事なのは“何が作りたいか”、“何を世の中に提供したいか”だ。これを考えることが本当に大事なことなので、これからもこのことを研ぎ澄ませていって欲しい。そうすることで、世界を代表するデザインを担っていく人になってくれることを祈っている」とエールを贈った。

<おわび> 魚住拓磨さんのお名前が間違って表記されていました。もうしわけございません。訂正して再出力しました。