マツダ CX-30 で魂動デザインが新しいフェーズに[チーフデザイナーインタビュー]

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柳沢亮チーフデザイナー

マツダのSUVラインナップへ新たに“追加”される新型車として、3月のジュネーブモーターショー2019で公開されたマツダ『CX-30』。そのデザインやパッケージングのこだわりはどこにあるのか? CX-30のチーフデザイナーである柳沢亮氏に話を伺った。

◆CX-3があって、CX-5があって

\----:CX-30も美しいデザインですね。『CX-3』でプロポーションやグラフィックスの美しさに驚きましたが、このCX-30も負けていないと思います。ところで、そんなCX-3とCX-30とパッケージやデザインにおいて根本的に違うところはどのあたりなのでしょうか?

柳澤亮氏(以下敬称略):我々にはCX-3という商品があって、『CX-5』という商品もあって……。CX-3の美しさを気に入っていただいてディーラーを訪れても、後ろが思ったほど広くないという理由で選んでもらえないケースがある。逆にCX-5は室内のスペースは十分にあるけれど、特に日本では大きすぎて運転が大変そうという印象を持たれてしまうことがある。機械式立体駐車場にも入れない。その「いいとこ」をとろうと思って作ったのがCX-30です。パッケージ的にはちょうど中間ですね。

\----:たしかに、数値上はちょうど真ん中。

柳澤:しっかりとしたキャビンスペースがあり、しっかりとした荷室もありつつ、寸法的には大きすぎない。立体駐車場にも入る。それがCX-30のパッケージングの基礎です。

\----:デザイン的にはいかがでしょう?

柳澤:我々は魂動デザインをずっとやってきましたが、魂動デザインも変化している。そして『マツダ3』から新しいフェーズに入りました。いまあるCX-3やCX-5とは異なるデザインに進化しているのがCX-30です。

◆クラディングの面積が多い理由は?

\----:具体的にはどんな特徴があるのですか?

柳澤:「スリーク&ボールド(Sleek & Bold)」をテーマとしています。 ご覧の通り、下半身はかなり太めのクラディングで覆いました。なぜこんなに太いのという疑問を持つ人もいると思います。

実は、下半身をブラックアウトして黒く見せているのです。上半分のボディカラーはとてもスリムで伸びやか。普通は4400mmの全長で(SUVを)デザインするとずんぐりむっくりしてしまうのですが、下半身を黒く見せることでとても伸びやかにしています。それが「スリーク」ですね。いっぽうで下半分はSUVらしく力強い。それが「ボールド」。だからスリーク&ボールドです。

\----:なるほど。確かにクラディングの面積が広いのは気になっていました。

柳澤:同じ世代でも、マツダ3と比べると、ドアパネルの造形が大きく違うんですよ。

今回のデザインのテーマは「トメ」と「はらい」です。実際の書道とは少し違いますが、ぐっと抑えて止めてそこから払う動きをインスパイアできないかと。たとえば側面を見ると、フロントフェンダーに力をいったんためて、そこからリヤタイヤに向かって放射していくようなイメージです。

マツダ3は、フロントから上に移してきた力が途中で向きを変えてリヤタイヤに向かい、リヤタイヤを踏ん張らせます。だからリフレクションが違います。マツダ3とCX-30は逆なのです。同じ世代だから似ていると思うかもしれませんが、よく見るとやっていることはかなり違います。

◆4人の大人がしっかり座って移動できるパッケージ

\----:あらためて真横から比べると、パッケージングの違いがよくわかりますね。

柳澤:マツダ3はオーナーカーとしてデザインしていますが、ハッチバックというマーケットの中で目立たせようと思い切ったデザインをしています。前席中心なので、リヤはスポーティに振っていますよね。ルーフは後ろ下がりで、サイドウインドウは後ろになるにしたがってタイトです。

CX-30は4人の大人がしっかり座って移動できるように、サイドウインドウの高さも前と後ろでほぼ同じです。6ライトのウインドウグラフィックスで、開放感も斜め後方の視界もよくしています。同じ世代の魂動デザインも比べてみるとこれだけ違うんですよ。

\----:話は変わりますが、マツダ3とはホイールベースを変えたことに驚きました。

柳澤:もちろん、効率においてはホイールベースをあわせたほうがいいこともたくさんあります。しかし、このクルマは全長4.4mにこだわりました。路上の縦列駐車でスッと入れるように。欧州ではCセグメントのクルマが多いので、そのクルマが止まっていた場所にはCX-30ならスムーズに入れるようにしたかったのです。

\----:その全長としつつ、荷室を広げるための苦労話もたくさんあるのでしょうね。

柳澤:ボク自身、荷室を広げたかったんですよ。荷室が広くなかったゆえにCX-3を選んでもらえなかったという声が聞こえてきましたし、マツダの社内でも小さな子供のいるファミリーが「(ほかに荷物があると)ベビーカーを積めない」という理由でCX-3が欲しいんだけど買えなかったという話もありました。荷室は大事だな、と改めて実感したんです。だから今度は、しっかりベビーカーが乗るクルマにしようと。

あと開口部ですね。CX-3は開口部(の下端部)が高いんですよ。それもできるだけ低くしようと。使い勝手がいいのにスタイリッシュなデザイン。それが、ボクの強い気持ちでした。

\----:デザインにおける、荷室を広くする工夫はどのあたりでしょう?

柳澤:バックウインドウ自体はかなり寝ているんですよね。でもテールゲートの、バックウインドウ下のポイントをかなり後ろに引っ張っているのです。すると、バックウインドウを寝かせても容積はしっかり稼げるんですよ。そうやってスタイリングと実用性を両立しています。

\----:ところで、フロントバンパーの“出っ張っていない感”がスゴイですね。マツダ3よりもCX-30のほうが強調されているように思えます。もちろん衝突安全性をクリアしているのは理解していますが、ぶつけた時にダメージが広がってしまいそうな気もしますね。ちょっとぶつけた時に、いままでだとバンパーだけで済んだのに、グリルまで交換しなければならなくなったりとか。

柳澤:我々は「リペアビリティ」と呼んでいますが、修理時のこともしっかり考えています。びっくりするほど高くなったりはしませんのでご安心を(笑)。でも、そんな心配が気にならなくなるくらい、デザイン的な魅力を感じていただけると嬉しいですね。

◆運転席と助手席とで対等

\----:インテリアはどうでしょう?

柳澤: マツダ3とCX-30は共通している部品もあって、たとえばメーターセットとかディスプレイ、空調のコントロールパネルなどは同じ部品です。ステアリングもそうですね。あとは思想もかなり似ていて、ドライバー周りの考え方も共通です。

ただCX-30はヒップポイントが高いので実際のレイアウトは違いますが、人間中心の思想ももちろん貫かれています。運転席のサイドルーバーは左右対称だし、ディスプレイもドライバーに傾けています。運転に集中できる環境を作っています。

\----:では、インテリアでマツダ3と異なるポイントは?

柳澤:大きく違うのは助手席のデザインですね。マツダ3はドライバーズカーとして作っているので、助手席周辺は引き算の美学。ドアに向けて水平に抜けているインパネとしました。

いっぽうCX-30は対等にドライブを楽しめるように考えたので、インパネのアッパーもドアに回り込んで助手席の人を包み込むように演出しています。インパネ周りには、ステッチを入れたりとクラフトマンシップにこだわっています。作り込みのこだわりも見ていただきたいですね。