<再ブレーク盤> 花岡なつみ『ふたり/Restart』 “このままじゃ終われない”という気迫!

花岡なつみ『ふたり/Restart』

 96年広島県出身、『国民的美少女コンテスト』での音楽部門賞を経て15年にデビューした女性歌手の約3年ぶりとなる3rdシングル。デビュー曲『夏の罪』は、鬼束ちひろの深遠な世界を歌い話題となったが、本作ではまた別の景色が見渡せる。

 『ふたり』は、恋の終わりを振り返り、「明日へ向かうための涙」と前向きにとらえたミディアムチューン。爽やかな美声も相まって、今春の別れからゆっくりと進みたい人へのエールソングにもなりそう。

 映画『きばいやんせ!私』の主題歌に起用された『Restart』は、孤独を感じる序盤から徐々に疾走感が増し、終盤にはとにかく前進したいという気持ちで歌い上げるナンバー。曲の途中から、彼女のドラマティックな歌声に、弦楽器やリズム音が並走するように加わっていく点も効果的で、主人公を応援したくなる。等身大で口ずさみたくなる『ふたり』に対し、『Restart』は、1本のミュージカルのような厚みがある。いずれにせよ、歌手としての表現力の高さに、“このままじゃ終われない”という気迫が伝わってくる。

 本作を聴けば、止むを得ず進めない状況でも、その年月が決して無駄にはならないと励まされるはず。

(テイチク・1204円+税)=臼井孝

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