春の鳥

 心地よい春のまどろみが、昨朝は鳥の美しい鳴き声によって覚まされた。イソヒヨドリのさえずりだ▲ヒヨドリという名前が付くが、農作物を荒らすヒヨドリではなく虫などを食べるツグミの仲間だ。オスは青とオレンジの羽の色が美しい。住宅地やビルの谷間などでよく通る声を響かせる▲通勤途中にはツバメのさえずりを聞いた。毎年巣作りをしているビルの駐車場の一角に、今年も戻ってきたらしい。ふんを嫌がって巣を落とす人もいるが、ツバメにとっては大切な家だ。人と野鳥がうまく共存してくれたらいいなと思う▲ウグイスの鳴き声もあちこちで聞かれていることだろう。多くの野鳥にとって、春は繁殖を前にした恋の季節だ。高らかなさえずりは異性を引きつけるアピール手段でもある▲長崎地方気象台の生物季節観測によると、今年のウグイス初鳴(しょめい)日は3月5日、ツバメ初見(しょけん)日は3月11日で、昨年より早かった。いずれも桜前線と同じように、3月から4月に掛けて、九州から北海道へと日本列島を北上していく。野鳥の動きはその年の春の歩みを知る指標の一つでもある▲本県地方は今週末、桜が満開となりそうだ。花見の席にもにぎやかな鳥の声が聞こえてくるかもしれない。目の喜びに耳の喜びが重なれば、春の空気を一層満喫できることだろう。(泉)

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