Exhibitionism─ザ・ローリング・ストーンズ展「世代と世界を超えて愛されるストーンズの世界観を存分に味わえる大規模な世界巡回展がついにアジア初上陸!」

1,800平米の展示空間に500点以上のアイテムを展示

50年以上にわたり世界的人気を誇る史上最強のロック・バンド、ザ・ローリング・ストーンズ(以下、ストーンズ)。彼ら自身が手がけた史上初、大規模な世界巡回展『Exhibitionism─ザ・ローリング・ストーンズ展 delivered by DHL / official Japan sponsor 才能発掘アプリ Fairchance』が品川区のTOC五反田メッセで開催されている。

開催に先駆けてメディア内覧会とオープニング・セレモニーが行なわれ、アンバサダーを務めるChar、鮎川誠、シシド・カフカが来場。土屋アンナ、アンミカ&セオドール・ミラー夫妻、ピーター・バラカン、ルースターズの大江慎也、亜無亜危異の仲野茂、ZIGGYの森重樹一など多彩なゲストがレッドカーペットを歩いた。

本展覧会はこれまで世界5カ所で動員数100万人を突破。音楽アーティストの企画展としては世界最大規模となり、アジアでは日本が唯一の開催国となる。1,800平米の展示空間にはストーンズにまつわる500点以上のアイテムを展示。ストーンズの結成から50年以上を振り返るアート、フィルム、楽器、機材、写真、衣装、パフォーマンス映像など、貴重なアーカイヴ等によって構成され、単なる展示に留まらず、映像や音声体験も臨場感たっぷりに味わえるものとなっている。

煌々と赤く輝く「LADIES AND GENTLEMEN」のエントランスを通過すると、壁一面に配置された複数のモニターに歴代のライブ映像がコラージュのように矢継ぎ早に映し出される。50年以上にわたるストーンズの歴史を駆け足で回顧できる粋なイントロダクションだ。

キース・リチャーズが一番好きな展示と語る、若かりし頃にミック・ジャガー、ブライアン・ジョーンズと共同生活をしていたイーディス・グローヴのアパートの再現が最初の見所。剥がれかけた壁紙、ビールの空き瓶が至る所に転がり、キッチンの流し台には食べ散らかした皿が洗われることなく積まれている。今にも生活臭が鼻につきそうな空間だが、「細部があまりに凝っていて、ちょっと気味悪いくらいだぜ」とキース自身が語る通り再現は実に忠実で、お世辞にも綺麗とは言えぬこの狭い部屋が世界屈指のロック・バンドの始まりを物語っていると思うと非常に感慨深い。

ブライアンのヴォックス・ダルシマーやハーモニー製ストラトトーン、キースのハーモニー製サンバーストや12弦アコースティック・ギターが飾られたコーナーには、初期のライブの貴重なフライヤーやファンクラブの会報誌『ザ・ローリング・ストーンズ・ブック』、1963年のクロウダディ・クラブでのライブ音源を収録したテープなどを展示。

なかでもライブの感想やバンドの状況について事細かに書かれてあるキース・リチャーズの掌サイズの日記帳が目を引いた。「たとえバンドがトニーをクビにしてもビルは残ると言ってくれた」(1963年1月11日)、「マーキー。チャーリーと(以下、判読不能)。バンドのサウンドにパンチやキレがない。それでも『ボ・ディドリー』では割れんばかりの喝采が起きた」など、几帳面なキースの性格が伝わる初期の第一級史料と言えるだろう。

ストーンズの楽曲を自由にミックスできる面白さ

ストーンズのソングライティングとレコーディングにスポットを当てたコーナーでは、1966年11月にストーンズ初のセッションが繰り広げられた、ウエスト・ロンドンのバーンズにあるオリンピック・サウンド・スタジオを再現したブースが素晴らしい。チャーリー・ワッツのグレッチやラディックのドラム、タブラ・セットにアフリカン・ドラム、キース・リチャーズの1957年製ギブソン・レスポール・カスタムやダン・アームストロング製ルーサイト・ベース、ブライアン・ジョーンズのギブソン製レスポール・スタンダードゴールドトップ、イアン・スチュワートのアイェロ&サンズ製ピアノ、ボビー・キーズのセルマー製サクソフォンなどが惜しげもなく並べられ、「レコーディングは常に実験だ。そこが好きなんだよ」とキースが語るストーンズ独自のレコーディングの息吹が伝わるようだ。

また、90年代以降の諸作品でプロデュースを務めたドン・ウォズが「プロデューサーの役割とは」、「いいテイクのために」、「スタジオのストーンズ」、「レコーディングの技術」について語る映像を見ることで、ストーンズの飽くなき実験精神の理解がより深まる趣向となっている。

「DOOM AND GLOOM」、「MISS YOU」、「UNDER COVER OF THE NIGHT」、「ANGIE」、「HONKY TONK WOMEN」(ライブ・バージョン)、「ROCKS OFF」、「SYMPATHY FOR THE DEVIL」(ライブ・バージョン)、「START ME UP」といった珠玉の楽曲を自由にミックスできるブースも楽しい。ボーカル、コーラス、ギター、ベース、ドラム、ブラスと振り分けられたフェーダーを自分の好みに上げ下げでき、ちょっとしたエンジニア気分になれるのが面白い。

ギター・ギャラリーに鎮座するキース・リチャーズとロニー・ウッドの貴重なコレクションにはファンならずとも息を呑むだろう。『SOME GIRLS』のレコーディングで活躍したというロニーの1955年製フェンダー・ストラトキャスター・サンバースト、テッド・ニューマン・ジョーンズがキースのために5本の開放弦をすべて鳴らすとGコードになるチューニングを施したダーク・ウッドの5弦ギター、キースがテキサスで364ドルで買ったという1972年製フェンダー・テレキャスターなど、ストーンズの歴史を彩った数々の名器が所狭しと並べられている様はまさに圧巻だ。

ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの学生だったジョン・パッシュが考案したストーンズの象徴的なロゴ「舌と唇 / LIPS AND TONGUE」を紹介するコーナーでは、巨大なプロジェクション・マッピングで「舌と唇」ロゴが七変化する様を楽しめる。その先のアートワークのコーナーでは、各年代のツアーのポスターやアルバムの宣伝ポスターのほか、ファースト・アルバム『THE ROLLING STONES』や『BIG HITS(HIGH TIDE AND GREEN GRASS)』のプレス用校正刷り、『IT'S ONLY ROCK'N ROLL』のジャケットの分色刷り、『LOVE YOU LIVE』のジャケット・デザイン用にアンディ・ウォーホルがメンバーを撮影したポラロイド写真、ピーター・コリストンが手がけた『SOME GIRLS』のアートワーク、ヒューバート・クレッチマーが『UNDERCOVER』のジャケットで起用した1955年頃のストリッパーのスライド写真など、ヴィジュアル面でも一貫して斬新なデザインを提示し続けてきたストーンズのアートワークを存分に堪能できる。

ストーンズの軌跡を心ゆくまで楽しめる体験型エキシビション

ストーンズと言えばファンの度肝を抜く大掛かりなステージ・セットも魅力のひとつ。ステージ&セットのコーナーでは、1990年2月の記念すべき初来日公演の記憶が鮮やかに蘇る『STEEL WHEELS TOUR』(1989〜1990年)、1995年3月に二度目の来日公演を果たした『VOODOO LOUNGE TOUR』(1994〜1995年)などのポスター、ステージのミニチュア・セットやアイディアのスケッチが展示されている。

アンディ・ウォーホルによるミック・ジャガーのシルクスクリーン、MTVの映像やフィルム作品の上映ブースを進むと、その先は煌びやかなステージ衣装の数々を紹介するコーナーにたどり着く。あのオルタモント・フリーコンサートを含む1969年の北米ツアーでミック・ジャガーが着用していたオメガマークのコスチューム、映画『LET'S SPEND THE NIGHT TOGETHER』で鮮烈な印象を残したミックのアメリカン・フットボールのユニフォームやイギリスとアメリカの国旗をあしらったマントなど、どれも見応えがあり、衣装から読み解くストーンズ史とも言うべき趣向だ。

この企画展でファンに味わって欲しいものとして、ロン・ウッドは「ステージに立つ感覚」を挙げ、「バックステージの空間から舞台に躍り出るあの感じ。演奏が観客の反応と出会う時に、僕らが味わう気持ちをね。あのギヴ&テイクは最高だ」と語っているが、その疑似体験ができるのが最後のバックステージの模様を再現したコーナーだ。イアン・スチュワート、ビリー・プレストン、ニッキー・ホプキンス、ダリル・ジョーンズなど、歴代のバック・ミュージシャンに対するメンバーの愛情に溢れたコメントの数々も非常に興味深い。

バックステージを通り抜けると、ストーンズが2013年にロンドンのハイドパークで行なったライブの3D映像を堪能できるエリアへ。ストーンズの魅力はやはりライブ。常に現役のライブ・バンドとして第一線で活躍し続ける彼らのライブのエッセンスを体験すると、七度目の来日公演を願わずにはいられない。

「ファンのみんなにも俺と同じ気分を味わって欲しいね。『すげえトリップだ!』って」とキース・リチャーズが語る通り、『Exhibitionism─ザ・ローリング・ストーンズ展』はストーンズが歩んできた軌跡の時間旅行が心ゆくまで楽しめる体験型エキシビションだ。昔からのファンも若い世代のファンも、50年以上にわたり人気を誇る彼らのロックの真髄を体感できることは間違いない。

2019年春、ロック界の至宝とも言うべき珠玉のストーンズ・アイテムが一堂に集まるのは世界中でここ日本だけ。ストーンズの歴史と世界観を堪能できる、この唯一無二の企画展をどうぞお見逃しなく。(取材・文:椎名宗之)

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