MotoGP開幕戦で浮き沈みが激しかったヤマハの問題点。「僕たちは多かれ少なかれ昨年と同じ」

 MotoGP開幕戦カタールGPのレースウイークでは浮き沈みが激しかったモンスターエナジー・ヤマハMotoGPのバレンティーノ・ロッシとマーベリック・ビニャーレス。ロッシは、2019年型ヤマハYZR-M1が「昨年と同じ」と語る一方で、ビニャーレスはヤマハの問題を避けるためのライディングを見つけたようだ。

 カタールGPで混乱した週末を送ったロッシ。その週末で最も温かい気温でのセッションとなった、フリー走行1回目では最速だったが、気温が不安定で低かった予選では14番手だった。そして決勝レースでは優勝したアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ミッション・ウィノウ・ドゥカティ)からコンマ6秒差の5位だった。

 決勝日のコースコンディションは良くなっていた。それがカタールなのだ。ひとつのセッションから次のセッションにかけてコースの状態が同じであることはめったにない。

 予選日、7度のMotoGPチャンピオンであるロッシは戸惑っているようだった。「トラブルがある。フロントの感触が悪く、タイヤを傷めてしまっている」とロッシは語った。

 決勝日、ロッシは昔からのマジックを見せた。かろうじてウサギを帽子から取り出して見せたのだ。1周目の終盤で12番手だったロッシは、どうにか戦い抜き5位でフィニッシュした。レースの激しい応酬に関して言えば、彼は常に別人だ。

 悲惨な初日と予選日の夜を過ごした後で、ロッシは再び笑顔になった。だが自身のMotoGPにおける20シーズン目と、ヤマハでの14シーズン目についての彼の予測は、ポジティブなものではない。

カタールGP決勝では14番手からスタートし5位でレースを終えたバレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

「レースに向けてバイクを改良した」とロッシはレース後に語った。

「作業はうまくいったし、満足しているよ。良いレースだったし、バイクの感触も良かったからね。問題だったのは、僕たちは多かれ少なかれ昨年と同じだということだ。僕は優勝者とコンマ6秒差の5位だった。でもこのコースでは僕たちは常に良い結果を出している。他のコースではさらに問題に見舞われるかもしれないから、作業を続けなければならない」

「いくつかの領域で改善することができたけれど、残念なことにいつもリヤグリップに苦しめられるんだ。ここではリヤタイヤがスライドしても耐えることができる。でも他のコースではタイヤがスライドしたら、大抵の場合パフォーマンスはもっと落ちるものだ。それに、トップスピードにおける差はとても大きい。ホンダとドゥカティはより強大なパワーをコースで出せるから、僕たちは加速とスピードで負けることになる」

■ドゥカティやホンダのマシンのようにヤマハYZR-M1に乗るビニャーレス

 ビニャーレスは新たなライディング技術を使って、フリー走行と予選ではすさまじい速さを見せていた。しかし、決勝では混乱し、気落ちした状態でレースを終えた。

 ビニャーレスは、ドゥカティやホンダのマシンに乗るかのようなライディング技術を使い、誰よりも速く走れることが分かったのだ。コーナリングのライン取りを変えることで、タイヤエッジの使用をできるだけ抑え、可能な限りタイヤをもたせることができた。

「コーナー進入と、バイクを走行させる点で大きな改善があった」と金曜日にビニャーレスは語った。

「高速でコーナーに入り、速くバイクを走らせ、できるだけバイクを傾けて数メートルを走る。それが僕のスタイルなんだ。今はそのスタイル向けにバイクを仕上げているところだよ。そうした方向性で作業をしている。コーナーにより深く進入し、早くにスロットルを開けてバイクを走らせるんだ。そのやり方の方が、ミシュランタイヤはうまく機能すると思う」

 ついにビニャーレスは、ミシュランタイヤのエッジを酷使するというヤマハの問題を避ける方法を見つけたようだ。だが日曜日のお粗末なスタートがすべてを台無しにしてしまった。ビニャーレスは集団の只中にいるときは新しいライン取りができないことが分かったのだ。

ポールポジションを獲得するも決勝は7位で終えたマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

 ビニャーレスがレース終了の3周前に、単独で走行している時にファステストラップを出したのは、偶然ではない。

 確かにビニャーレスの技術上の説明には意味がある。だが、おそらく心理的な側面もあるのだろう。一部のライダーは、テストやフリー走行など、プレッシャーが少ない時に自由に速く走ることができる。だが彼らはレースでは平静を保つのに苦労するのだ。

 ヤマハには以前にもそのようなライダーがいた。1999年から2004年にかけてヤマハのファクトリーライダーだったカルロス・チェカがそうだった。テストでは王者で、フリー走行でもしばしば最速だった彼は、ヤマハYZR500やYZR-M1で優勝することはできなかったのだ。

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