「サッカーコラム」「B代表」はもういらない 森保ジャパンに必要なのは集団としての戦い方を示すこと

日本―ボリビア 後半、先制ゴールを決めた中島(8)を祝福する(左から)鎌田、南野、堂安=ノエスタ

 身につけているのは、日の丸がついた青いユニホーム。だが、二つのチームはまったくの別物だった。同じ監督が指揮し、フォーメーションも共通しているのだが、試合の進め方や戦い方に一貫性があるとはいえない。チームの特徴は、実際にプレーする個人の組み合わせによって生まれてくる側面がある。それゆえ、先発メンバー11人を総入れ替えしたら同じコンセプトの下に試合を進めようとしても違う試合内容になるのは当然だ。

 22日にコロンビア、26日にはボリビアと対戦した日本代表の3月シリーズ。今回は5人の新しいメンバーが招集されたにもかかわらず、驚きも目新しさもなかった。「低い期待度のなかでの想定内」。個人的にはそんな感じの展開だった。

 森保一監督はコロンビア戦の後「もっと多くの選手に代表の戦力として計算できる部分、選手層を厚くしてチームとしてベースアップを図っていかなければ」と語っていた。計算できて戦える駒を、数多く手元に置きたいというのは、どの指揮官も共通して思うことだろう。

 チームは常にベストの11人で戦い続けられるものではない。当たり前のことだが選手は故障もすれば、不調に陥ることもある。特に現在の日本代表の主力は、ほとんどが欧州でプレーする選手で占められる。チームや監督が替われば出場機会を失うという危険性は、Jリーガーよりもはるかに高い。

 「新しい選手を試してみたい」という森保監督の考えは理解できる。特に外国人選手との対戦機会が少ないJリーガーは、国際試合でどこまでできるかは未知数だ。世界のリーグに比べればフェアな選手と、接触プレーに厳しい判定を下すレフェリングに守られた国内組の選手たち。彼らが国際試合に臨み、外国人選手のリーチの長さやタックルの激しさに戸惑うということをよく耳にする。

 ただ、今回の3月シリーズを前に森保ジャパンは、公式戦のアジア・カップも含めて12試合を消化している。今更、第1戦と第2戦のメンバーを総取り換えする必要があるのかと思う。もちろん、大幅なメンバーの入れ替えが全て悪いわけではない。アジア杯のグループリーグ第3戦のウズベキスタン戦で見せたターンオーバーは、主力を休ませるという意味もあったので、戦略として有効だった。しかし、選手の見極めという意味で2チームを編成するという時期はもう終わったのではないだろうか。

 ワールドカップ(W杯)などのビッグトーナメントを前にすると、「あのチームはすごいメンバーがそろっている」とうらやましくなることがよくある。冷静になってよく考えると分かるのだが、どんなに有名な選手が登録枠の23人に名を連ねていても、ピッチに立てるのは11人なのだ。その意味で、いかに基本の幹となる先発の11人のところを強化するか。新たに加わる戦力を、その集団に違和感なく加えていくかが、強いチームを作れる方法なのではないだろうか。

 今年1月にはアジア杯があった関係で、欧州のクラブはシーズン中にもかかわらず日本代表の選手を大会に出さなければいけなかった。契約を交わす時点で日本協会の招集に応じる要項も細かく決められているのだろうが、シーズンも折り返して重要な時期に入っている時期に戦力を引き抜かれる側としては「給料を払っているのはこっちだぞ」という思いは間違いなくあるだろう。挙句の果てに、大迫勇也のように所属チームに戻ったとたんに、日本代表の活動中に故障していたことが判明したら、クラブ側は選手を出し渋る恐れがある。今回もベストの編成ではないのだが、日本代表が満足できる状況で活動できる時期は思っているほど多くないはずだ。

 スターティングメンバ―を見れば、コロンビア戦がAチームで、ボリビア戦がBチームだろう。そして、コロンビア戦に先発した鈴木武蔵を除いた4人の初代表組、安西幸輝、畠中槙之輔、橋本拳人、鎌田大地の4人は、試合を通してのA代表のサッカーを少ししか体感できなかったのではないだろうか。なぜなら現在の日本代表は、2列目を構成する中島翔哉、南野拓実、堂安律の3人がいてこその森保ジャパンだからだ。特に攻撃に関しては、3人抜きではまったく別のものとなる。

 今回、図らずもアジア杯を故障のため欠場した中島が戻ってきたことで、その存在感の大きさがクローズアップされた。現在の日本代表が、この小柄なドリブラーの個人の力に依存していることが、より明白になった。ただ、コロンビア戦の後半のように、その武器を相手は必ず消しにかかってくるだろう。

 B代表はもういらない。森保監督には、個に頼るだけではなく集団としての戦い方を、早々に示してもらいたい。ベースの定まっているチームなら、新しく招集された選手でも戸惑うことなく加わっていけるだろう。チームの幹が揺るぎなくしっかりとしていれば、接ぎ木された新しい枝もいずれたくましく育っていく。

 次のW杯まであと3年。その期間は、恐らくあっという間に過ぎ去っていくはずだ。新しい元号の下で。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はロシア大会で7大会目。

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