交通事故後遺症相談して 対策機構が活用呼び掛け

制度の活用を呼び掛けるNASVA神奈川支所の亀井さん(左)と高橋富士夫支所長 =横浜市港北区

 交通事故の後遺症に苦しむ人は多い。医療技術の進歩で死者数は全国的に減少する一方、重度の後遺障害が残る事故は依然として多発している。被害者支援などに取り組む独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)の神奈川支所(横浜市港北区)は「被害者家族は多忙になり、支援制度を見落としたり、知らなかったりするケースもある」とし、活用を呼び掛けている。

 1982年に友人が運転する自動車に同乗し、事故に遭った北島総美さん(56)=川崎市川崎区。当時、助手席のシートベルト着用は義務化されておらず、装着していなかった。「気がつくと病院のベッドの上。何が起きたのか分からなかった」。頸椎(けいつい)損傷などで今も車椅子での生活が続く。

 北島さんは、障害年金に加え、2001年頃から同機構の介護料の支給を受け、介護用ベットなどの購入に充てることができた。同機構が開催する介護料受給者や家族向けの交流会にも参加し、「交通事故で障害を負った人にとっては、健常者には分かりづらい悩みなどを相談できる場になっている」と話す。

 県内の交通事故による死者は年間約150人で推移する。交通事故で重度の後遺障害が残る人は死者数の半数ほどとされており、同支所の亀井憲さんは「重度の後遺障害が残る人は県内に70~80人ほどいるのではないか」と推測。ただ、年収など一定の要件があり、そもそも周知が行き届いていないこともあるため、同支所の介護料支給の新規認定は年間10件程度にとどまっている。

 介護料は10年以上前の事故による障害でも対象になるケースもある。受給者はNASVA職員の訪問支援が受けられ、介護で外出が困難な家族も介護に関する必要な情報が提供されるなど精神的にも支えられている。

 このほか、同機構は前身の自動車事故対策センター時代から、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の資金を活用し、交通事故被害者や交通遺児らの生活支援などを手掛ける。

 ただ、05年の個人情報保護法の施行後は警察や自治体、被害者支援団体などから個人情報が得られず、救済が必要な被害者に支援が行き届いていない恐れもある。「広報活動はしているが、被害者側から連絡がなければアプローチできない」と亀井さん。「事故後、何年もたって制度を知る人もいる。1日も早く相談し、日々の生活に役立ててほしい」と話している。問い合わせは、同支所電話045(471)7401。

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