ホンダがトップスピードでドゥカティを抜く。MotoGP開幕戦で記録した6メーカーのトップスピードを分析

 カタールのロサイル・インターナショナル・サーキットでは1年で最初のMotoGPレースが行われるが、そこにはシーズン中で最長のロングストレートがある。だからトップスピードのタイムは重要だ。最も重要なのは、ホンダがストレートスピードでドゥカティに対抗するために行った大きな努力が、この開幕戦に実ったということだ。

 2018年のカタールGPにおいてホンダRC213Vは、ドゥカティ・デスモセディチGPより時速約3km/h遅かった。2019年は、RC213Vが時速約0.4km/hデスモセディチGPより速く、速度差で大きな改善を果たした。

「HRCとチームは冬の間にトップスピードのために多くの作業を行った」と現MotoGPチャンピオンのマルク・マルケスは語った。

「僕たちにはパワーがあるし、トップスピードでは首位にいる。時間は自由に使えるのだからこのことは重要だよ」

 マルケス以外のRC213Vも、2月のセパンオフィシャルテストで見かけられたいわゆる“弁当箱”を、カタールGPでは装着していなかった。そのことは燃料タンクカバーの下から様々なコンポーネントを動かし、改良したエアボックス、マフラー、インジェクター本体のために大きなスペースを確保するという努力の一部を表しているようだ。

ホンダRC213Vのメインフレーム両側面につけられたカーボンファイバー製の容器

 その代わりにバイクのメインフレーム両側面には、カーボンファイバー製の容器が再び取り付けられていた。この容器が最初に見られたのは2018年11月のオフシーズンテストで、電子系のコンポーネントが収められていると考えられる。

■スズキGSX-RRもストレートスピードを大幅改善

 スズキは2018年から2019年にかけて、トップスピードにおいて大きな躍進を遂げた。カタールGPで2019年型スズキGSX-RRは、2018年よりも時速約4km/h速かったのだ。

 カタールGPでスズキは、トルダクターを初めてGSX-RRに装着していた。トルダクターをギヤボックスの出力シャフトに取り付けられたセンサーで、リヤタイヤへのトルクの伝達量を測るものだ。これはエンジニアがいかなる状況でも、エンジンと電子制御で適切なトルクを生み出す助けになる。

スズキGSX-RRのギヤボックスの出力シャフトに取り付けられたトルダクター

 ホンダはトルダクターを2010年に初めて使用したチームで、F1での活動からその技術を得たのだ。当時は、トルダクターがECUにどれだけのトルクをリヤタイヤに送るかを伝達していたが、現在の共通ソフトウェア規則では、トルダクターはエンジンマネジメントのセットアップに役立てるために、データロガーにしかデータを送ることができない。

 スズキのトップスピードの向上は、おそらくスリップストリームも関係があるだろう。ジョアン・ミルとアレックス・リンスは、ふたりとも首位争いをしていた。彼らより速いドゥカティとホンダ勢からスリップを得ることができたのだ。実際は、MotoGPの公式トップスピードは絶対的なものだと捉えられるべきではない。なぜならスリップを使って前へ出ることも、順位が決まる際に役割を果たすからだ。

バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

 とはいえ、カタールGPでのヤマハのトップスピードは悲観的なものだった。4番目に速いバイクなのに、アプリリアよりわずかに優位にあるだけだったのだ。KTMのトップスピードも速くはなかった。2018年からRC16はトップスピードで遅れをとっているが、それは主に逆回転クランクシャフトエンジンのためだと思われる

■マニュファクチャラーごとのカタールGPでのトップスピード

マニュファクチャラー 2019年 2018年

ホンダ 時速352.0km/h 時速349.1km/h

ドゥカティ 時速351.6km/h 時速351.9km/h

スズキ 時速349.2km/h 時速345.3km/h

ヤマハ 時速347.0km/h 時速345.3km/h

アプリリア 時速346.9km/h 時速345.0km/h

KTM 時速345.1km/h 時速347.4km/h

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