家具固定は、民間賃貸でも実施できる!

へーベルメゾンの防災パッケージを取材しました

©株式会社新建新聞社

「へーベルメゾン」は鉄筋の入った軽量気泡コンクリートの外壁「へーベル」を用い、高い耐震性や耐火性が特徴(提供:旭化成ホームズ)

ハーイ!
みなさん、こんにちは!

今回は、この話題。2019年3月1日のニュースを見てくださいましたか?

写真を拡大 https://www.asahi-kasei.co.jp/j-koho/press/20190301/index/

旭化成ホームズが賃貸住宅「へーベルメゾン」の防災パッケージを発表しました。中でも、ここ、

地震時に大きな被害につながる家具転倒を防ぐため、通常の賃貸住宅では難しかった家具固定を可能とした壁面や、転倒の恐れのある家具類を収納する「集中収納」を設けるとともに・・

「キター!!」という言葉は、今ここで使うべき言葉としか思えないくらい「キター!!」って思いました。

 

賃貸住宅であるヘーベルメゾンでは、冷蔵庫や家具を置くであろう壁面には固定用の下地を設置して、「家具固定OK」のプレートが設置されます。視覚的にもわかりやすく、気軽に、家具の固定ができるし、その事でしっかりと入居者にも命を守る行動を促せますよね!

画期的なはずなのに「地味」

これ、リスク対策.com読者の方は、耳タコ状態でしょうけど、ずっと賃借物件の家具転倒防止の原状回復義務免除に取り組んできたので、ついに民間にまでと思うと、涙がでてきちゃいます。

最初に取り組んでくださったのは、東京都港区でした。港区の公営賃貸物件について原状回復義務免除に取り組んでくださいました。

■賃貸住宅の家具転倒防止対策に希望が!港区の先進的な取り組みをご紹介します‼
https://www.risktaisaku.com/articles/-/2873

その後、各地の議員さんの活躍で、東京都昭島市、三重県四日市市、香川県観音寺市、埼玉県日高市でも実施されました。

■昭島市に学ぶ。2週間であなたの街の防災力を格段にあげる方法
https://www.risktaisaku.com/articles/-/11884

■命を守る家具転倒防止金具、ネジ穴原状回復免除!
https://www.risktaisaku.com/articles/-/14133

最初に実施してくださった港区の2017年の報道発表で、今後は民間物件にも及ぼしていきたいとの武井雅昭区長の発言がありました。あれから2年。ついに、民間で実施してくださるところが出てきたのです!

でもね。心弾む思いで、旭化成ホームズさんを取材したら、こんな話をお聞きしました。

上記の報道発表した時に、出てきた感想が社内からもお客さんからも

「地味ですね」

というものだったそうです。

開発の陰に入居者アンケート

私としては、こんなに心待ちにしていた事態だというのに、世間からは「地味」って言われるものなのかと思って、検証してみました。

写真を拡大

ヘーベルメゾンでは過去に、ペット共生賃貸住宅や子育て世代向け賃貸住宅、都市で働く女性向け賃貸住宅、シニア向け安心賃貸住宅などを提供されています。

写真を拡大

それらに比べると、防災パッケージは・・・、

写真を拡大

確かに・・・。見ているだけで ペットや赤ちゃんの写真にほわ〜っと癒される訳ではないから、「地味」とか言われちゃうのも分からなくもないかもですね。

それでも、担当者であるマーケティング本部営業推進部商品・仕様グループの玉光祥子さんがこの企画を実現まで推し進めたのは、訳がありました。

へーベルメゾン入居者1144人の郵送によるアンケートから以下の結果が出ていたのです。

写真を拡大

賃貸住宅でも、災害に対する強さが重要だと考える人は、99.6%という結果です。

これだけ災害での被害が多くなっている昨今ですし、ライフスタイルの変化から、持ち家を選んでいない人も増えています。それなのに、賃貸住宅では命が守られないなんて、あってはならないですよね。

家具固定理解の大家も

アンケートではさらに、賃貸住宅に求められる防災性能が質問されました。すると、

写真を拡大

停電時に電気が使えることや備蓄に加えて、部屋の壁への家具の固定は堂々3位に入っているのです。3位ですよ! 今まで、賃貸だから仕方がないのかもしれないと諦めてきたけれど、でも、それで本当にいいんだろうか? 命を守りたいのに守れない現状に対する不満がここに現れていると思います。

写真を拡大

また、災害に対する強さがお部屋選びの決定要因の一つになったかという質問に対し、そう思う、ややそう思う合わせて77.8%ありました。「防災性が高いことで入居の決め手になると思います」という実際に入居された方の声は切実です。

この質問項目は3の質問で「ある・ややある」に回答された方が対象になっています。3の質問というのがこちら。

写真を拡大

へーベルメゾンは、一般の建物に比べて災害に強いイメージがあると答えた方が73.2%という結果になっています。これまで災害対策をされてきたので、たとえ、絵的には派手ではなくても<家の使命は住んでいる人の命と暮らしを守ること>だから、必ず実施しなければ、そう担当者の方が強く願い、この防災パッケージが実現したというのも分かります。

写真を拡大

今回改めて私がつくづく思ったのは、「防災は本当に地味なんだ!」ということです。「そこ?」って思われそうですが、実はこれは重要なことかもしれないって思います。あたりまえだから地味なんです。でも、そのあたりまえが守られなくなることが災害なのです。

民間賃貸物件で大々的に防災が提案されなかったり、提案されてもあまり報道されないのはこの地味さが原因かもしれません。それだけではなく、大家さんに覚悟も伴います。傷ひとつないのが美しいとされる価値観の中で、家具の転倒防止でできる壁の傷の原状回復を求めないというのは、大家さんにとってハードルが高いですよね。

でもうれしいことに、このコンセプトに共感してくださり、そこに住む人の命と暮らしが守られる賃貸物件を選択される大家さんも増えているのだそうです。地味だけど、あたりまえを守るために取り組もうとする方が着実に増えているのが希望です。

広げよう、家具固定の輪

先日、国士舘大学の防災・救急救助総合研究所のシンポジウムに登壇した際、この賃貸住宅の原状回復義務免除について発言しました。その話題の中で、登壇者の同大講師、月ヶ瀬恭子先生がこんなことをおっしゃっていました。

https://research-db.kokushikan.ac.jp/kouhp/KgApp?kyoinId=ymbygdgyggy

「学生たちは、学内で防災に取り組み、地域とも連携して災害に対応できるよう学んでいます。でも、入学に際し、家を借りる場合、学費も考えると安い住居を探してしまいます。そうなると、耐震性に問題があったり、賃貸であることから家具の転倒防止はできません。安い物件を選びたくなる気持ちもわかりますが、学生たちの夜帰る場所は、学生の命が守られる場所であってほしいです」。

国士舘大学では、防災・救急救助総合研究所を設け、全学部開講のカリキュラムの中で防災の基礎知識の普及を図り、防災リーダー養成に取り組まれています。

https://www.kokushikan.ac.jp/research/DPEMS/

写真を拡大

こんなに頑張ってくださっている学生たちなのに、夜間に被災した場合、地域を守るどころか、学生たちの命が危険にさらされるなんてあってはいけないと思います。

だから賃貸物件であっても、耐震性や家具の転倒防止実施はどんなに地味でも譲れない、大切なこととしてもっと広がってほしいのです。

地味と言われながらも実現してくださった旭化成ホームズさんに感謝の気持ちを込めつつ、これが標準となるほど広がってほしいと願います。そして、企画が派手か否かの地味ではなく、賃貸物件でも家具の転倒防止や災害対策が、「『あたりまえすぎて』地味だね」と言われるよう常識が変わればいいのになと願っています。

自治体が賃貸公営物件の原状回復義務免除を推進することで、民間の常識も変えることができますし、住民の常識も変えていきます。今現在の家具固定の実施件数が例え多くなくても、常識を変えるための方策ですので、こちらも引き続き実施する自治体が増えることを願っています。

(了)