平和実現へ「波紋広げて」 東京で「戦禍の記憶」展 写真家の大石芳野さん講演

©株式会社長崎新聞社

 被爆者らを撮影した写真集「長崎の痕(きずあと)」(藤原書店刊)を出版したドキュメンタリー写真家、大石芳野さん(東京)が、約40年にわたり国内外で撮影した作品を集大成した写真展「戦禍の記憶」が、東京・恵比寿の都写真美術館地下1階展示室で開かれている。初日の23日に同館で大石さんの講演があり、被爆地長崎をはじめ、各地で目の当たりにした戦争被害の現実を報告。平和の実現に向け「皆さんが波紋を広げてほしい」と訴えた。【24面参照】
 同展は1980年代以降に取材、発表してきた作品の中から選んだモノクローム約160点を、撮影地域ごとに3章構成で展示。
 第1章「メコンの嘆き」は東南アジアで起きたベトナム戦争、カンボジア内戦などがテーマ。第2章「民族・宗派・宗教の対立」はアフガニスタン戦争やコソボ紛争、ナチスドイツによるホロコーストなど。第3章「アジア・太平洋戦争の残像」は、長崎の12点をはじめ広島、沖縄などの作品が並んでいる。
 講演では「戦禍」をテーマに撮り始めた契機として、1970年ごろ訪れた東南アジアで、親しくなった村人から「日本軍がこの村の女性や子どもを殺した」と聞かされ、衝撃を受けた経験を語った。返還後の沖縄でも「戦後も人々の中に戦争は残っている」と深く感じ、「終わっても終わらない戦争の影に焦点を合わせてきた」と振り返った。
 その後、各章の代表作などを解説。長崎の作品では「長崎の原爆遺構の象徴」として、旧浦上天主堂の被爆マリア像の写真を紹介。「長崎市は遺構保存より復興と発展に力を注ぎたいとして遺構を壊し、あまり残っていない。広島との大きな違い」と指摘した。
 また、沖縄での平和学習の様子を写した作品を見せて「子どもや若者にこそ(戦争の悲惨さを)伝えないと、日本はどうなるか心配」と強調。「戦争では、とりわけ子どもたちがひどい目に遭う。若者や女性が『子どもを守らなければ』と一生懸命言っていくのが大事。私の写真は重たくて悪いなとも思うが、でも見てほしい」と締めくくった。
 同展は5月12日まで。観覧料一般千円など。今回の展示作品を収載した写真集「戦禍の記憶」(クレヴィス刊)も4月上旬発売される。184ページ、2700円。

講演で被爆マリア像の写真について解説する大石さん(右)=東京都写真美術館