苦しむ被爆者 知って 写真家の大石芳野さん出版

写真集「長崎の痕(きずあと)」

©株式会社長崎新聞社

 戦争の傷に苦しむ人々の姿を追うドキュメンタリー写真家の大石芳野さん(東京)が、被爆地長崎をテーマにした初の写真集「長崎の痕(きずあと)」(藤原書店刊)を出版した。20年以上にわたる取材を基に、被爆者のポートレートを中心としたモノクローム221点を収載。「登場するのは130人ほどだが、同じように苦しむ何人もの被爆者がいると知ってほしい」と話している。
 大石さんは1943年東京生まれ。約40年間、国内外で戦争や紛争が生んだ惨禍をテーマに取材している。2001年の土門拳賞受賞「ベトナム 凜(りん)と」など写真集多数。平和を訴える有識者グループ「世界平和アピール七人委員会」委員。
 「長崎の痕」は、1997年から今年までに故谷口稜曄(すみてる)さんをはじめ、さまざまな境遇の被爆者らを取材、撮影した作品を収載。被爆時の状況や、その後の体験に関する説明文を添えていて、それぞれの人生の困難や悲しみ、怒りが胸に迫る。被爆未指定地域で原爆に遭った「被爆体験者」問題も取り上げた。日赤長崎原爆病院名誉院長の朝長万左男氏が解説文を寄せた。
 長崎の街角の風景写真などを交え、長崎原爆の知識が不十分な人でもその全体像が分かるように編集。「(長崎原爆がさく裂した)午前11時2分も知らない人に、どう伝えたらいいかと苦心した。若い頃は元気でも、年を重ねて弱くなった分、恐怖や苦しみ、本当の自分がむき出しになっている、そんな被爆者の姿が伝われば」と話した。
 287ページ、4536円。9月5~17日、長崎市茂里町の長崎新聞文化ホール・アストピアで、長崎新聞創刊130周年を記念し「長崎の痕」の写真展がある。

「長崎の痕」の表紙
故谷口稜曄さん(「長崎の痕」より)