ザギトワさん賞金、プロ競技と比べればすずめの涙

By 太田清

世界選手権のエキシビションで演技するアリーナ・ザギトワ選手=24日、さいたまスーパーアリーナ

 フィギュアスケートもシーズン終了を迎えようとしている。アリーナ・ザギトワ選手が世界選手権女王となるなど女子は今季もロシア勢が大活躍したシーズンとなったが、ロシアのスポーツ紙スポルト・エクスプレス(電子版)などは30日までに、同国の女子スケーターの賞金獲得額(税引き前)をまとめた。 

 トップはザギトワさんで、計13万4000ドル(約1480万円)。世界選手権優勝(6万4000ドル)、欧州選手権2位(1万6000ドル)などの賞金を積み上げた。2位は欧州選手権チャンピオンのソフィア・サモドゥロワさんで4万7000ドル(約520万円)。同選手権勝利で半分近い2万1000ドルを稼いだ。 

 3位はエフゲニア・メドベージェワさん4万5000ドル(約500万円)で世界選手権3位の3万3000ドルが大きく貢献した。4位は前シーズンの不調から復活しGPシリーズのスケートカナダで優勝したエリザベータ・トゥクタミシェワさん3万9000ドル(約430万円)。なお、サモドゥロワさんとトゥクタミシェワさんは4月11~13日に福岡市のマリンメッセ福岡で行われる世界国別対抗戦に出場予定で、さらに賞金を上乗せする可能性がある。 

 もちろん賞金すべてが本人たちのものとなるわけでなく、ここから税金を引かれ一部はチームやコーチに支払われる。 

 さらに、ロシア代表に選ばれた選手には、スポーツ省から給与が支払われる。支払額は公表されていないが、ザギトワ、メドベージェワ両選手らトップクラスのスケーターの場合、毎月10万~12万ルーブル(17万~20万円)になるとされる。また、ロシア大統領から「給費」名目で毎月3万2000ルーブル(約5万円)も支払われている(今年2月から5万2000ルーブルに引き上げられた)。 

 アイスショーへの出場も大きな収入源。先ほどの両選手クラスで一回の出場の相場は1万ドル(110万円)程度だが、一部はロシアのフィギュアスケート連盟やコーチが受け取る。日本でのショーでは2万ドルになるとの報道もある。 

 一方、スポルト・エクスプレス紙は、こうした報酬もロシアのクラブチームFCロコモティフ・モスクワのセンターバック、ベドラン・チョルルカ選手の400万ユーロ(約5億円、ボーナスなし)など純粋なプロであるサッカーのトップクラスの報酬と比べるとわずかで、ザギトワさんの1年分の報酬をわずか2週間足らずで稼いでしまう計算になると強調。

 もちろん、ザギトワさんの場合は、広告出演など日本企業を含むスポンサー契約による収入が遥かに大きいのは言うまでもない。米国のスポーツ専門チャンネルESPNの試算によると、同契約の報酬は計250万ドル(約2億7000万円)に達するが、それはサッカーやテニスなどほかの競技のプレーヤーでも同様だろう。 

 いずれにしろスポーツニュースサイト、スポルト24はこうした収入にもかかわらず、16歳のザギトワさんは相変わらず「祖母と妹とともにモスクワの小さな賃貸アパートに住み続けており、五輪優勝のお祝いでもらった(出身地ウドムルト共和国の)4部屋のアパートは両親にプレゼントするなど、まだお金にはまったく関心ない」と指摘している。 (共同通信=太田清)

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