改正入管難民法あす施行 外国人労働者の受け入れ拡大 地域の支えが鍵

 「ガンバッテー」「スゴーイ」
 3月中旬、長崎市横尾2丁目の横尾地区ふれあいセンター。地域の高齢者や子どもたちが定期的に集うサロンに、6人のベトナム人技能実習生が初めて参加した。初対面にもかかわらず、住民と一緒にゲームをしたり、会話をしたりと積極的に交流。はじける笑顔で場を盛り上げた。
 彼女たちは昨年10月から社会福祉法人「平成会」が同地区で運営する老人ホームに勤務している。「惣菜加工」の職種で配食サービスの弁当を作っている。人手不足を背景に、初めて実習生を受け入れた同法人の担当者は「技術の習得は早い上、明るい性格で周囲を元気にしてくれる」とメリットを口にする。
 来日して約半年。日本語も日々上達する中、担当者が心配するのは、母国との「生活スタイル」の違いだ。ごみ出し一つをとっても、住民と摩擦を引き起こす恐れがある。「顔見知りになっておけば、困ったときに助け合う存在になれるはず」と考え、住民側に参加を相談した。「みんな親切でとても楽しかった」。交流後、目を輝かせる彼女たちの姿に担当者は安堵(あんど)の表情を浮かべた。
 改正入管難民法に基づき、外国人労働者の受け入れを拡大する新制度が4月に始まる。新たな労働力として日本に定着するためには、労働環境の整備と同時に生活支援が鍵になる。県内でも実習生を受け入れている地域の一部では、共生に向けた模索が始まっている。

 昨年10月から3人のベトナム人技能実習生が働く五島市三井楽町の農業法人「アグリ・コーポレーション」。佐藤義貴代表はイモの生産、加工作業に従事する彼らの勤勉ぶりを評価しつつ、「地域住民の理解を得るのは何よりも大切」と力を込める。3人は赴任後すぐ、監理団体の指導で町内会長にあいさつに行った。
 町内の祭りにも連れて行き、「今では地域の人から『アグリ・コーポレーションの子たちね』という感じで受け入れられている」と実感を語る佐藤代表。30日には社員と花見を楽しみ、桜の季節を満喫。「若くして母国を離れて日本に来ているから、仕事以外の楽しみも感じてほしい」。日本の文化に触れてもらいながら生活面をケアしている。
 雲仙市千々石町の上塩浜地区の住民は、4年前からスーパーで働くベトナム人の実習生と交流を続けている。七夕やクリスマスの時期には、千々石川を一緒に飾り付け。同地区の松崎一二(かずじ)さん(58)は「ご近所付き合いと一緒。外国人やろうが日本人やろうが、同じ地区の住民に違いはなかさ」と、文化や言語の壁を感じさせない。
 「文化の違い」を逆手に取り、交流を図る取り組みも。同市南串山町の巻き網漁業者らは約20年前からインドネシア人の実習生を受け入れ、毎年10人ほどが来日する。そんな彼らと地域をつなぐツールは料理。互いの食文化を理解し合おうと住民有志が昨年、「雲仙市インドネシア料理研究会」を立ち上げた。
 地元食材で作った同国の郷土料理を祭り会場などで振る舞い、文化交流に一役を買う。実習生の一人は「インドネシア料理は手間を惜しまず丁寧に作るのでおいしくなる。皆さんとも時間をかけて交流していきたい」と話す。
 外国人の増加による地域活性への期待も見え隠れする。大村市では中心市街地の旧浜屋ビルに4月、長崎ウエスレヤン大(諫早市)の外国人日本語学校が開校。インド、ネパールの留学生を最大120人受け入れる予定だ。市は市内在住の外国人と住民が外国料理を通じて交流する行事を定期開催しているが、地元の商店主らの間でも、留学生が増えるのを「商機」と捉え、独自に交流を模索する動きもあるという。

住民(左)と一緒にゲームを楽しむベトナム人技能実習生ら=長崎市、横尾地区ふれあいセンター
「これが日本の春だよ」―。アグリ・コーポレーションは、ベトナム人実習生(右、左)を交えて花見をし、社員らと食文化の違いなどの話に花を咲かせた=五島市内

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