駅にない「駅の売店」 大震災で駅舎移設も元の場所で営業

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阪神石屋川駅の売店。震災前は、フェンスがある位置に改札があった=東灘区御影石町2

 阪神石屋川駅(神戸市東灘区)の改札口から車道を隔てた西側に、青色のテントの建物が見える。近づいてみると、店主が「ここ、駅の売店やねん」。なぜ、構内ではなく、こんなところに?

 2代目の古宅知恵子さん(68)に聞くと、かつて売店は同駅の改札口を出てすぐの場所にあったという。しかし、1995年の阪神・淡路大震災で駅舎は倒壊。「店はそのままの場所で、新しい駅舎が道路の向かい側に建ったんよ」

 売店は知恵子さんの父音吉さんが59年に創業。阪神電車の運転士で、退職後に同駅で店を始めた。震災の日の朝も、母の和江さんが1人で店番をしており、駅舎や高架が崩れる様子を目の当たりにした。店自体は前年に建て替え工事をしたばかりで無事。「1ミリも動かなかったのよ」と知恵子さん。

 その後、新しくなった駅舎の構内に売店を出す話が出た。「でも、常連さんたちが『車で寄れんようになる』『構内は嫌や』って言うてね。断って、そのまま営業することにした」

 3年前に他界した和江さんは、最期まで店を心配していたという。採算は厳しく、1日に訪れる客は50人程度。「続けるか迷ったけど、両親の思いや、野球の話をしに来てくれる常連さんがいるからね。暇やけど、おしゃべりしてると退屈しないわ」

 店は今年、還暦を迎える。「私ももうちょっと頑張らないとあかんね」。(津田和納)