「偽ウイングバックと“徹底”! 改革進む京都サンガがおもしろい」

まさかのJ2で19位に沈んだ昨季から一転、京都サンガが魅力的なサッカーを展開中だ。

今季から監督を務める中田一三氏は、ポゼッションの徹底を基本コンセプトに設定。自分たちがボールを握って能動的に攻めるスタイルの構築に取り組んでおり、それに伴い選手たちの特長も引き出されている。

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今回の当コラムでは、新スタイルが浸透しつつある京都に注目し、戦術のキーマンたちや今後継続して披露されるかもしれない“作戦プランB”に迫っていきたい。

■基本形は3-4-2-1

上図が今季の基本システムだ。アルビレックス新潟との開幕戦および2節の鹿児島ユナイテッド戦では4バック(4-3-3)が採用されたが、3節以降は3バック(3-4-2-1)がメインとなっている。

守護神は清水圭介で、最終ラインは右から大卒ルーキーの上夷克典、大ベテランの田中マルクス闘莉王、本多勇喜の3人。

ダブルボランチは庄司悦大と重廣卓也が務め、ウイングバックは右に福岡慎平または石櫃洋祐、左に黒木恭平が入る。2シャドーはジュニーニョ(中野克哉)と小屋松知哉で、1トップには復帰した宮吉拓実が起用されている。

■新戦術を支えるキーマンたち

今季の京都は、GKと最終ライン+ダブルボランチのポゼッションを軸に、ボールを動かしながら攻めるスタイルを標榜している。このセクションでは、新スタイルに欠かせない男たちを紹介したい。

まずは、司令塔としてゲームをコントロールする庄司だ。今季より10番を背負うパスマスターは、レノファ山口およびFC岐阜時代からパスの正確性を高く評価されてきた。ポゼッションスタイルの確立には、やはり優れた司令塔が不可欠。いかなる局面でも冷静にボールを散らせる庄司は打ってつけの存在なのだ。

また、左ウイングバックに入る黒木も不動の存在として君臨しているが、この背番号5はポジション取りが面白い。フォーメーションの表記上は左ウイングバックだが、実際には左ボランチの位置でプレーし(重廣はトップ下的な位置に入る)、ビルドアップに関与している。

ここ数年はサイドバックの選手がボランチ付近でプレーする“偽サイドバック”を取り入れるチームも増えているが、黒木の場合は“偽ウイングバック”として振る舞い、庄司とともにリズムを生み出している。

黒木が中央に移動した分は、左シャドーの小屋松が左サイドに張る形で埋めている。積極的な仕掛けで躍動する背番号22は、キレのあるドリブルでチャンスを演出。5節のジェフユナイテッド千葉戦では、右からクロスに左足で合わせてゴールを奪うなど、好調をキープしている。事実上の左ウイングバックとして、ハツラツとしたプレーで攻撃を牽引中だ。

そして、4シーズンぶりに帰還した宮吉は、最前線に入って攻撃の起点に。ユース時代より将来を嘱望されてきたアタッカーは、興梠慎三を彷彿とさせる巧みなフリックで相手を翻弄。攻撃の潤滑油的な役割を果たしつつ、自らもフィニッシュを狙うCFとしてプレースタイルを確立しつつある。

■“作戦プランB”の継続披露も⁉

開幕から6試合を消化し、2勝3分1敗で7位につける京都。10年ぶりとなるJ1昇格へ向け、悪くないスタートを切った。今後は「スタイルを研究された際にどう対処するか」が焦点となる。

攻撃サッカーを標榜するチームは、「守備を固められてゴールを奪えず、カウンターから失点がかさむ」という悪循環に陥ることが少なくない。特にクラブ間の戦力差がさほどないJ2では、この“負のスパイラル”を抜け出せず一気に順位を落とすケースもあるのだ。

このような悪循環に陥らないためには、スタイルのマイナーチェンジやシステム変更が有効となってくる。この点において、京都にはスペシャルな選手がいる。リベロの闘莉王だ。

センターバックながら破格の得点力を誇る闘莉王はこれまで、CBに加えFWとしても起用されてきた。ケヴィン・オリスとツインタワーを形成した2017年シーズンには15ゴールを記録するなど、実績は十分だ。

チームがポゼッションを徹底していることもあり、今季の“FW闘莉王”は新潟との開幕戦のみでしか実現していない。だが、今後も攻撃に変化をつけたい際は、背番号4を前線に置く “作戦プランB”が披露される可能性はあるだろう。空中戦の強さは国内屈指なだけに、クロスやロングボールから闘莉王の高さを活かす攻めは迫力満点。サイドからの好配球が期待できる石櫃が控えているのもプラス材料だ。

果たして中田監督は闘莉王をどう活かしていくのか。そして、シーズン終了までポゼッションサッカーを貫いていくのか。その選択から目が離せない。

2019/3/31 written by ロッシ

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