陶芸家・長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」

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陶芸家·長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」

 杭州市の南宋宮廷遺跡付近から出土した天目茶碗の破片(方肖鳴さん所蔵)。3月30日、杭州古越会館で撮影。(建陽=新華社記者/李穎)

 【新華社福州4月2日】日本で親子2代にわたり「曜変天目(ようへんてんもく)」茶碗の再現と研究に取り組む陶芸家、9代目長江惣吉さんは、中国で建盞(けんさん)と呼ばれる福建省建窯(けんよう)で焼かれた茶碗の研究のため訪れた同省南平市建陽区で新華社の取材に応じ、これまで一部の人が日本の国宝に指定されている宋代の曜変天目茶碗を偶然の産物とみなし、不吉の前兆として遠ざけるため日本に伝えたと主張してきたことについて、中国の陶工の才能や宋代の文化価値に対する否定だと語った。

陶芸家·長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」

 3月25日、福建省南平市建陽区の雲谷山荘工房でろくろを回す長江惣吉さん。(建陽=新華社記者/李穎)

 「天目」は、宋代の黒釉茶盞に対する日本人の呼び名であり「曜変天目」はその中で最も貴重とされる。日本には国宝に指定された陶磁器が14点あるが、うち8点は中国から伝えられたものであり、宋代建盞4点も含まれる。3点は「曜変天目」と呼ばれ、1点は「油滴天目」と呼ばれる。

陶芸家·長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」

 3月26日、福建省南平市建陽区の雲谷山荘工房でろくろを回す長江惣吉さん。(建陽=新華社記者/李穎) 

 「曜変天目」の特徴とされる焼成時に生じた美しい結晶は、一般的に偶然性が高いと言われているが、長江さんは「単なる偶然ではなく、良いものを作ろうとする努力の中で生み出された偶然だ」と指摘。「陶工たちは現在の科学的方法を知らなかったが、自らの理論と経験を持ち、良いものを作り出すことに一生を捧げた。良いものは偶然出現するものではない」と語る。 

陶芸家·長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」

 3月27日、福建省南平市建陽区水吉鎮後井村の竜窯「後井第一窯」でろくろを回す長江惣吉さん。(建陽=新華社記者/李穎)

 また「2016年に行われた藤田美術館の国宝「曜変天目」への蛍光X線分析には私も曜変再現研究家として参加したが、重金属元素は使用されておらず、酸性物質を加えたことで気体が釉薬の表面に彩光を形成させたものだと分かった。この技術は偶然ではない。偶然ならもっと多くの残片があるはずだが、残片は1つも存在しない」と述べ、曜変の出現が単なる偶然だと言う主張は、陶工の才能を過小評価し過ぎているとの考えを示した。

陶芸家·長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」

 3月27日、全国重点文物保護単位(国の重要文化財)に指定されている福建省南平市建陽区水吉鎮後井村の建窯遺跡。(建陽=新華社記者/李穎)

 長江さんは「杭州の南宋宮廷遺跡でも曜変の破片が出土しており、皇帝が使用していたことを示している。中国人が曜変を不吉の前兆とみなしていたという説は、当時の中国人に審美眼がなかったと言うのに等しく中国人に対して失礼だ。これらの説は宋代の文化価値も否定している」と話す。

陶芸家·長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」

 3月27日、福建省南平市建陽区水吉鎮後井村の竜窯「後井第一窯」。(建陽=新華社記者/李穎)

 「曜変天目」がその後の中国で用いられなくなったことについては、中国人の喫茶習慣が変わり天目茶碗を使うことがなくなったことに関係があるのではないかと語る。「日本ではその後も使われ続け、明の永楽帝が日本の幕府の将軍に天目茶碗を10点送った記録があるほか、韓国沖で見つかった元代の沈没船からも多くの建盞が見つかっている」と述べた。

陶芸家·長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」

 3月27日、福建省南平市建陽区水吉鎮後井村の竜窯「後井第一窯」で、ろくろを回す長江惣吉さん(左)と作業を見つめる窯主の廖成義(りょう・せいぎ)さん。(建陽=新華社記者/李穎)

 長江さんは江戸時代から陶芸を営む家に生まれた。歴代当主は代々「惣吉」の名を受け継ぎ、長江さんで9代目となる。8代目の父が「曜変天目」に再現に取り組み始め、父なき後は長江さんが引き継いだ。親子2代で既に72年になる。父が一切の記録を残さなかったため、長江さんは手探りで作業を始め、建陽にも30回以上通い建盞の製法を研究した。「曜変の再現は基本的に出来るようになったが、宋代のレベルには達していない」と語る。

陶芸家·長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」

 長江惣吉さんの作品「七彩盞(しちさいさん)」。(資料写真、建陽=新華社記者/李穎)

 長江さんは「世界にはそれぞれ土地が生み出した良いものがある。それらを互いに鑑賞して交流し、文化や審美眼を共に高め合うというのが理想だ。理想の実現のために私は努力を続ける。私の生涯は素晴らしいものになるだろう」と語った。(記者/李穎)

陶芸家·長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」

 長江惣吉さんの作品「七彩盞(しちさいさん)」。(資料写真、建陽=新華社記者/李穎)

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 長江惣吉さんの作品「曜曜斑盞(ようようはんさん)」。(資料写真、建陽=新華社記者/李穎)

陶芸家·長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」

 長江惣吉さんの作品「銀毫盞(ぎんごうさん)」(資料写真、建陽=新華社記者/李穎)

 長江惣吉さんの作品「銀毫盞(ぎんごうさん)」。(資料写真、建陽=新華社記者/李穎)

陶芸家·長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」

 長江惣吉さんの作品「銀毫盞(ぎんごうさん)」。(資料写真、建陽=新華社記者/李穎)

 長江惣吉さんの作品「銀毫盞(ぎんごうさん)」。(資料写真、建陽=新華社記者/李穎)

 

陶芸家·長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」
陶芸家·長江惣吉さん「曜変天目は宋代陶工の努力の産物、偶然ではない」