アメリカ野球の多様性を体現する独立リーグ 渡辺俊、久保ら日本人も多く在籍

現在では北米地区に8つの独立リーグが存在

現在では北米地区に8つの独立リーグが存在

 独立リーグは19世紀に、アメリカで、メジャー・リーグに参加できなかったチームが集まって、独自にリーグを組んで興行を始めたのが最初だ。当初は、メジャー・リーグに対してマイナー・リーグと言われた。

 メジャー・リーグのライバルとして観客動員を競っていたが、1930年代にカージナルスのGMだったブランチ・リッキーが効率的に若手を育成するために、独立系のマイナーチームを球団傘下のファームに再編成。これが成功をおさめ、他のMLB球団もこれに倣ったために、多くの独立リーグ球団がメジャーの傘下に入り、独立リーグはMLBが進出していない西海岸に残るのみとなった。

 ただし、当時の独立リーグの球団はそのまま消滅したわけではない。MLB球団の傘下となって、MLBが契約した選手を預かり、独立採算で試合興行を行っていた。コーチや監督も自前で雇用することが多かった。現在のMLB傘下のマイナー・リーグチームも、大部分が当時の独立リーグの流れをくむ単独のチームだ。MLB球団直営のチームは、ルーキー・リーグなどマイナー下部のチームだけだ。

 こうしたMLB傘下のマイナー・リーグ球団は、MLB球団と契約を結んで球団を運営している。他のMLB球団傘下に移動することも珍しくない。またマイナー球団の中には地域密着で多くの観客を集めているチームも少なくない。

 1958年にブルックリン・ドジャース、ニューヨーク・ジャイアンツが西海岸に進出すると、この地域に残存していた独立リーグも衰退し、1971年には北米の独立リーグはいったん消滅した。しかし90年代にMLBがエクスパンションを始めると、選手の絶対数が不足したために、再び独立リーグが各地に設立されるようになった。

 現在では北米地区に8つの独立リーグが存在。合わせて59チームが独自にペナントレースを行っている。

四国アイランドリーグplusは選抜チームを組んで米と勝負

 米の独立リーグのペナントレースの開幕は、4月中旬以降と遅い。MLBのスプリングトレーニングが終わり、MLB各球団のロースターが決定して、そこから漏れた選手が独立リーグに入団してくるのを待って開幕するからだ。中には、かつてのスター選手が独立リーグに流れることもある。そういう選手が入団すると、独立リーグ球団は大々的な宣伝をして、集客に結びつけようとする。

 日本からも、多くの選手が独立リーグでプレーするために渡米している。最近では、ロッテのエースだった渡辺俊介や、ロッテ、阪神、DeNAで活躍した久保康友などが独立リーグでプレーした。MLB傘下の球団よりも入団しやすいこともあって、NPBを経由せずに、アマチュア野球や日本の独立リーグから入団する選手も多い。

 独立リーグ球団の第一の目標は、MLBに選手を送り出すことだ。そのために、各球団はMLBとも友好関係を保ち、成績を公表するとともに、MLBのスカウトとも連携している。同時に野球の試合での観客動員にも熱心だ。試合前に様々なイベントを開催し、地域の観客を取り込もうとしている。ユニフォームなどオリジナルグッズを販売したり、試合中継を配信したり、規模は小さいがMLB球団と変わらないマーケティングを展開している。MLBの元有名選手が、独立リーグの幹部に就任するケースもみられる。

 2015年から日本の独立リーグ、四国アイランドリーグplusが、選抜チームを組んで米の独立リーグと交流戦を行っていた。四国の関係者によると、米独立リーグは、リーグによって実力の格差が大きいが、トップクラスの独立リーグにはNPBでも即通用しそうな選手がそろっていたという。

 2018年の時点で、MLBは2リーグ30球団、その傘下のマイナー球団はAAAからルーキー・リーグまで18リーグ214球団、さらにその外側に8リーグ59球団の独立リーグ。アメリカのプロ野球のすそ野は広い。そして多様だ。独立リーグはアメリカ野球のダイバーシティを象徴しているといえるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

© 株式会社Creative2