新元号は「令和」

 漢字の原形とされる甲骨文字では「命」の意味で使われたという。「令」という字は「命のもとの字」だと字典「常用字解」(平凡社)にある。「命のもと」と思えば、その字がいつもと違って見える▲感じ入る「ほぉ」だったか、意外に思う「えっ?」だったか、列島全体、発表と同時に短い声が発せられたに違いない。新しい元号が「令和」に決まった。万葉集にある「初春の令月(れいげつ)にして 気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ」の文言から引いた▲令の字から多くの人が「命令」「法令」といった言葉を思い浮かべるだろう。お達し、言いつけの意味でよく使われるが、清らかで美しいさまも表す▲「和」の字と合わせ、「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」という意味が込められたという。清らかな「命のもと」と平和の「和」、二つ重なれば、その語感はほのかに温かくもある▲新元号が決まり、平成の終幕が実感を伴ってきた。「今まさに時代の変わり目」と思った後、2月の在位30年式典で天皇陛下が平成の世を語られた言葉がふと浮かぶ。「国民の平和を希求する強い意志に支えられ、近現代において初めて戦争を経験せぬ時代を持ちました」▲変わり目を経ても、変えてはならない「意志」がある。命と平和が守られる令和の時代にと、いささか気の早い願い事をする。(徹)

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