<レスリング>【2019年全国高校選抜大会・特集】アンクルホールド連発! 圧巻のV2…71kg級・佐藤匡記(東京・帝京/JWA)

(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫) 

2年連続優勝を達成した佐藤匡記(東京・帝京/JOCエリートアカデミー)

 試合が醸し出す熱気と新潟市体育館名物の天井に設置された電熱ヒーターのそれが重なり合い、設置された4面マットは何度も沸点を越えた-。3月27日から3日間に渡って開催された2019年風間杯全国高校選抜大会。

 最終日に3回戦から決勝まで争われた個人戦71㎏級では、佐藤匡記(東京・帝京/JOCエリートアカデミー)が決勝で小柴伊織(佐賀・鳥栖工)を相手に第1ピリオド開始早々からアンクルホールドでポイントを重ね、11-0のテクニカルフォール勝ち。昨年の66㎏級に続き2年連続優勝を収めた。

 試合後、佐藤は「2日目に入ってからの4試合はいずれも強い相手だった」と興奮気味に話し始めた。「決勝ではアンクルホールドがきれいに決まって、ホッとしています」

 全試合を通じ、準決勝の深田雄智(関東・日体大柏)との試合が印象に残っているという。「なかなか自分から点数を取れなかったですから。自分からプレッシャーをかけていき、コーションをもらって点数が入った場面が勝負の分岐点だったと思います」

 4月から高校3年生になる佐藤は、中学3年生からJOCエリートアカデミーに籍を置く。「強い先輩ばかりいたので、自分もアカデミーに入って強くなりたいと思いました」

デフェンスに磨きをかけ、高校三冠王者を目指す

 当時から将来を嘱望される存在だったが、素顔は中学生。初めて親元を離れた生活に慣れるまでは大変だったという。 「ホームシックはなかったけど、洗濯とか今まで自宅ではやらなかったことを自分でやらなければならなかったですからね」

決勝で炸裂したアンクルホールド

 今では自宅に帰りたくないと思えるほど日々の生活が充実しているのかと水を向けると、佐藤は白い歯をこぼした。「今年の目標は、インターハイでも2連覇を達成し、秋の国体も制して(昨年は逃した)高校三冠を取ること」

 佐藤を指導するアカデミーの江藤正基コーチは「ホッとしている」と胸をなで下ろした。「決勝は関東勢が上がってくると思ったけど、地方の選手が上がってきた。地方の選手が伸びているように感じました」

 そうした中、卓越した強さを見せる佐藤の持ち味は「点数を取られるケースは少ない」と胸を張るディフェンスだ。「子供の時から守りは得意だった。この前、アカデミーの先輩で憧れの選手でもある乙黒拓斗先輩(山梨学院大)からタックルの切り方を教わりました。自分のものにはなっていないので、まだまだ練習中ですが…」

 全身から自信をみなぎらせながら、佐藤は時折、少年っぽい笑顔も浮かべた。幼稚園の年中からレスリングを始めたというから、キャリアは10年以上。若きベテランはどこまで強くなるのか。

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