新種の淡水エビ 壱岐で発見 イキシマカワリヌマエビ

イキシマカワリヌマエビ(中原さん提供)

 長崎県佐世保市の環境・建設コンサルタント、西部環境調査の中原泰彦さん(49)は新種の淡水エビを壱岐市で発見し昨年、「イキシマカワリヌマエビ」と和名が付いた。カワリヌマエビ属の新種が南西諸島以外の日本列島で発見されたのは約170年ぶり。中原さんは「夢がかなった。ほかの地域での生息も確認したい」と話す。

 湖や川にすむ淡水エビのうち、カワリヌマエビ属は卵の中で育ち、子エビの状態で生まれる特徴がある。日本本土ではミナミヌマエビが在来種として生息。しかし観賞用の生物の放流や温暖化の影響で外来種との交雑が進み、純系の個体が消えつつあることが問題になっていた。

 淡水エビの研究が専門の中原さんとイキシマカワリヌマエビの“出合い”は2013年。希少動植物に関する長崎県のモニタリング調査で壱岐市を訪れた。用水路や池などにすむ甲殻類を調べていると、山間部の小川でミナミヌマエビよりも一回り小さいエビを発見。白地に茶色のまだら模様で、知っているエビとは違った。

 「新種ではないか」。当時、ミナミヌマエビの純系を見つける研究に参加していた中原さんは、台湾とシンガポールの共同研究者にサンプルを提供。DNAと体の構造を分析し、2017年に新種として論文を発表した。壱岐島は近くの対馬島と比べ九州から分離した時期が遅かったため、固有の生物はいないとされていた。「(新種を発見した)うれしさと驚きはあったが、初心に帰ってつぶさに観察しなければ本当のことは分からないと、改めて学んだ」と振り返る。

 今後は、ほかの地域でイキシマカワリヌマエビの生息を確認することを目指している。一方で、壱岐島内の発見場所では数十匹から数匹程度に個体数が減り、ほかのエビも見つかるようになった。「守るためには注視し続けなければならない。『壱岐に固有種はいない』という定説がどうなっていくのか知りたい」と前を見据えた。

「ほかの地域での生息も確認したい」と意気込む中原さん=佐世保市三川内新町、西部環境調査

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