ザギトワさん、ドーピング検査に長時間かかった理由 

By 太田清

3月23日、さいたまスーパーアリーナでインタビューに応じるアリーナ・ザギトワ選手

 ドーピングといえば、現代のアスリートにとって避けて通れない大きな問題だ。かつては女子テニスのスター選手、ロシアのマリア・シャラポワさんが新たに禁止されたメルドニウムに陽性反応を示して1年3カ月の資格停止処分を受け、リオデジャネイロ五輪を欠場するなど大きな騒ぎとなった。 

 特にロシアについては、世界反ドーピング機関(WADA)が検体のすり替えや検査データの改ざんを指摘、14年ソチ冬季五輪などでの国ぐるみの不正を認定した。平昌冬季大会では国としての参加は認められず、女子フィギュアの金メダリスト、アリーナ・ザギトワ選手らは国歌や国旗が使えない「ロシアからの五輪選手(OAR)」として出場したことは記憶に新しい。 

 こうした中、ザギトワさんや平昌大会銀メダリストのエフゲニア・メドベージェワ選手を育てたロシアの名コーチ、エテリ・トゥトベリゼさんが3日までに、ロシア政府系テレビ「第1チャンネル」の番組で著名司会者のウラジーミル・ポズニェルさんのインタビューに答え、さいたま市の世界選手権で優勝したザギトワさんについて、年齢とともに体が成長したことが競技に影響したことを認めながら、成長を抑制するドーピング使用を否定。一方で練習などでの過度の負荷が選手の成長に影響することを認めた。スポーツニュースサイト「スポルト24」などが抜粋を報じた。 

 ▽私たちのドーピング

 トゥトベリゼさんは、成長を抑制するドーピングがあれば「私が使いたい」と冗談交じりに話しながらも「今シーズン、アリーナはとても成長して、(少女から)小さな女性に成長した。ドーピングがなかったということでしょ。こうした変化は私たちの(勝利への)道を複雑にしたけど、(五輪だけの)一回限りのチャンピオンじゃないということを証明したいという気持ちが打ち勝った。いわばこれが私たちのドーピングよ」と強調。 

 その上で「シーズンが終わり、選手たちは休暇に入るけど、どんな体で戻ってくるかは分からない。練習などの負荷が減れば、体はすべてのエネルギーを成長に向けてしまう。もし彼女たちがスポーツをやっていなければ、もう少し背が伸びて体も大きくなっているはず。スポーツが成長に影響を及ばさないはずがない」と指摘した。 

 ▽小瓶

 一方、ザギトワさんが、さいたま市での世界選手権SPの演技後、ドーピング検査に5時間近くかかり、解放されたのは翌日午前3時だったほか、フリーでも検査に8時間も要したことについて、SPでは「一定量以上の検体を(検査官に)すぐには提供できなかった」などと述べ、飲食を制限したことが理由だったことを認めた。

 また、フリーでさらに時間がかかったことについて理由は分からないとしながら「とっても面倒な事情があって、検体を入れる小瓶ですら、特別な人が持っている。こうした状況でリラックスしてすべてを迅速に終わらせるよう努力しなければいけない。アリーナの検査に時間がかかった点には、何の政治も関係ない(故意にロシアを狙い撃ちにしたのではないということ)」と述べ、ドーピング検査時の環境も時間がかかった要因だと語った。 

 ▽メルドニウム

 シャラポワさんに陽性反応が出たメルドニウムについても「それぞれの(国の)チームが体調を保つ製剤を使っていて、我々の場合はメルドニウムだったけど、当時はドーピングの対象ではなかった。なぜ、多くの(ロシアの)スポーツ選手が禁止された後も使い続けたのか分からない。前もっていつから使ってはいけないか、分かっていたはずなのに」と強調した。 

 ザギトワさんを巡っては、平昌五輪のSP前の公式練習でも、WADAの検査官が突然、検査を要求。検査のため事実上練習できず、一部ロシアメディアは「嫌がらせ」とWADAを批判したこともあった。 (共同通信=太田清)

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