【MLB】イチロー引退、敵軍選手たちの心にも“穴” 「彼無しのリーグは違ったものに」

現役引退を表明したマリナーズ・イチロー【写真:AP】

カージナルスの選手たちが敬意、元エースは特大弾&流し打ちの記憶を振り返る

 マリナーズのイチロー外野手が21日のアスレチックス戦(東京ドーム)後に現役を引退してから、約2週間が経過したが、球界関係者からは続々とその偉大さを称える声が上がっている。ヤンキースに次ぐ11度の世界一を誇るカージナルスの選手たちも、レジェンドに敬意を表している。地元紙「セントルイス・ポスト・ディスパッチ」が伝えた。

 イチローが引退を表明した直後、カージナルスの選手たちは複雑な心境だったという。記事では、キャンプ施設のクラブハウスでラストゲームのハイライトを選手たちが見たという事実を紹介。その中には、マーリンズ時代にチームメートだったマルセル・オズナ外野手も含まれていた。現マリナーズのディー・ゴードン内野手らとともに、イチローを“師”と仰ぐ選手の一人だ。

 特集では「イチローがもし本塁打競争に出場していたら、毎年優勝できただろうと、マーリンズでイチローと共にプレーしたマルセル・オズナは彼のカージナルスのチームメートたちに伝えた」と言及。メジャーリーガーとしては小さなイチローの体のサイズを記した上で「彼が打ちたいと思えば20本のホームランを打撃練習で立て続けに打つことができた」としている。イチローがフリー打撃で柵越えを連発するという事実を知らない人は、もはやいないほど。オズナは同僚として3シーズン、それを目の当たりにしてきたわけだ。

 絶対的なエースとして活躍してきた右腕ウェインライトも登場する。イチローはカージナルス戦でメジャー通算81打数27安打の打率.333と活躍しているが、唯一のホームランをウェインライトが打たれているという。つまり、イチローの“パワー”を実感した一人だ。

「時々、彼は大きな当たりを打っていたものだよ。彼はその試合の2球目を435フィート(約136メートル)の先頭打者ホームランにしたんだ。僕は、『なるほど、この男は力で自分を打ち負かそうとしている』とその時思ったよ。そして次の打席(実際には第4打席)で、彼は三塁手(の頭上)を越える二塁打を打ったんだ」

 力強く引っ張って特大弾を放ったかと思えば、その後の打席では逆方向に流し打つ。ウェインライトは記事の中で、イチローに翻弄されたことを振り返っている。

「現実離れした反射神経は傑出」「僕は彼を見て育った」

 メジャー屈指の救援左腕と言われるミラーもイチローに脱帽している。左打者にとっては攻略が極めて困難な変則の剛球左腕だが、背番号51との対戦は通算打率.273。そのスタイルには一目を置いていたようだ。

 ミラーは同紙の取材に「彼の独特なバッティングの構えはとても目を引くものだったね。おそらく自分が彼と初めて対戦したのは彼の全盛期の2007年だったかな。彼のバットコントロールときたら、アウトコースの球でも食らいついてくるんだから、アウトを奪うのは信じられない程難しかったよ」と回顧。そして、「彼と対戦するときはいつもワクワクしたものだった。彼の現実離れした反射神経は傑出していたよ」と脱帽している。

 一方で、2013年にメジャーデビューしたワカは、イチローを見て育ってきた世代。ただ、メジャーでの対戦経験もあり、通算6打数2安打3四球の打率.333、出塁率.556という数字が残っている。27歳の右腕は、イチローがフィールドからいなくなる寂しさを記事の中で明かしていている。

「彼は僕から.333も打ってるの? じゃあ彼が殿堂入りすることになるのは、僕のお陰だね! 僕は彼を見て育った。彼と対戦することはとてつもなく感動的な出来事だったよ。彼のキャリアは素晴らしいものだ。彼がグラウンドから去る姿、そして拍手喝さいを受ける姿。日本での引退が実現できたことは、彼にとっても彼のファンたちにとってもとても特別なことだったと思うよ。僕は彼に対して、尊敬しかないよ。彼無しのリーグは、少し違ったものになっていくだろうね」

 2001年に海を渡り、パワー全盛のメジャーに新たな風を吹かせたイチロー。そして、19シーズン目にユニホームを脱ぐことになり、またメジャーは変わっていくとワカは感じているという。それだけ、背番号51の存在感は大きかった。イチローがいなくなることで、心にぽっかりと穴が空くような思いをしているのは、ファンだけではない。(Full-Count編集部)

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