難航する植物移譲 温室の120種は枯れる恐れも 来年度解体 旧県亜熱帯植物園

温室内には約千株の植物が残されており、温室がなくなると枯れてしまうという=長崎市、旧県亜熱帯植物園

 2017年3月末に閉園した旧県亜熱帯植物園(長崎市脇岬町)は本年度予算に解体の設計費が計上され、来年度に解体が始まる。植物の移譲は難航し、温室に残る約120種類千株の植物は、温室の解体とともに枯れてしまう可能性が高い。県は個人への移譲も検討し対応を急いでいる。
 県によると、自生するものも含めて園内に約4万5千株あった植物のうち、既に移譲したのは約2500株。佐世保市の九十九島動植物園(森きらら)や県立高校などがもらい受けた。さらに約1200株の移譲を準備しており、大部分は長崎市が開く予定の恐竜博物館を予定している。
 一方、それ以外の植物はもらい手が見つかっていない。露地の植物は自生できるが、温室の植物が生きていくには人の手が必要だ。
 3日、県の許可を得て園内に立ち入った。イノシシが荒らした跡や雑草が散見されるものの、多くの植物が閉園前のまま残っていた。いまは長崎市野母崎振興公社の職員が1人で約32万5千平方メートルの広大な敷地を管理している。職員は「手入れしないと温室の植物は枯れる。本年度中に引き取り手が現れるといいが」と話した。
 移譲のハードルは多い。温室の植物は温度調節が必要なほか、露地の植物も地温が高い脇岬地区と似た環境でなければ自生できないものがある。さらに、敷地は急斜面地にあるため根を張った樹木を引き抜くと地滑りの懸念があり、高さ5メートル、幹の直径40センチを超える樹木は移譲できない。このため、移譲可能な植物は限られてしまう。
 県は即売会の実施を視野に入れ、個人への移譲を検討している。ただ、樹木を輸送するコストや個人への移譲に向けた手続きなど解決するべき課題は多い。県の担当者は「種の保存のためにも植物を速やかに譲りたいとは思っているが、どうしたものか」と漏らした。

© 株式会社長崎新聞社