<レスリング>【2019年全国高校選抜大会・特集】多度津が21年ぶりに学校対抗戦3位に入賞! “躍進”香川がさらに飛躍する

(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)

21年ぶりに学校対抗戦3位入賞を果たした多度津(香川)=チーム提供

 昨年の個人戦で10年ぶりにチャンピオンを輩出し、初の2階級優勝を達成した多度津(香川)が、今年は学校対抗戦で3位入賞の殊勲。地元インターハイに向けて燃えていた1998年以来、21年ぶりの表彰台に上がった(当時は「多度津工」)。

 個人戦で優勝する選手を2人(山根典哲=50kg級、田中勝大=80kg級)も抱えていた昨年も、学校対抗戦で3位に入賞する力があったはずだ。しかし、3回戦で和歌山北(和歌山)に敗れ、ベスト8に残ることができなかった。

 その悔しさがあったからこそ、個人戦で2人が優勝する奮起につながったのだが、その前年がベスト8だっただけに、一歩後退の結果が悔やまれた。

多度津を支える80kg級の田中勝大。準決勝で負傷し、個人戦は棄権した

 多度津の山田円博監督は、昨年1年生で優勝した田中が残る今年のチームに期待。組み合わせを見て、「今年は(3位を)狙えると思って頑張ってきた」と言う。ただ、大会が近づくにつれ、けが人が出てしまったことに不安があったという。田中はひじのじん帯を負傷して練習がほとんどできない状況だった。

 そんな中でも準決勝まで勝ち進んだことに、「ベスト4以上というチームの目標は達成できました。よくやってくれました」と選手の労をねぎらった。準決勝の鹿島学園(茨城)戦は「65、71kg級が勝負だった。ここを落としたことは、まだまだですね」と振り返った。

 この試合でリーダーの田中が負傷して病院に運ばれるアクシデントもあった。インターハイへ向けては、「けが人が出ているのが引っ掛かっている。まず、しっかりと治させたい」との“目標”を掲げた。

一貫強化、ライバル校との切磋琢磨のほか、世界に目が向いている

 最近の香川県の躍進は特筆すべきものがある。キッズ教室に加え、多度津中でもレスリング部があり、多度津の躍進は一貫強化によるところが大きい。高松北というグレコローマンを中心に目覚ましい活躍をしているライバル校があるのも、大きな刺激材料だろう。

多度津の躍進を支える山田円博監督

 高松北からは一昨年、グレコローマンで竹下航生が世界カデット選手権で銅メダル、日下尚が5位入賞の好成績。昨年は竹下がアジア・カデット選手権で銅メダルを取るなど国際舞台でも台頭。得意なスタイルは違うが、競り合うことで実力をアップさせていることが予想される。

 香川県にはオリンピック選手がおり(香川中央・野々村孝監督)、国際審判員も2人いる(香川中央・沖山功顧問、多度津・増田荘史コーチ)。また、現役選手では同県出身の鴨居正和(自衛隊)が世界選手権で5位に入る活躍をするなど、発展の下地は十分にある環境。山田監督は「この流れを切らさないようになっていきたい。ジュニアからしっかり育て、切磋琢磨していきたい」と言う。

 意外にも県単位での合同練習はほとんどやらないというが、関西などへ遠征に行く時には一緒に行くことが多い。県外の高校が練習に来る時には連絡し、参加希望があれば受け入れるなど、ライバルである一方、団結力も強い。他県の選手との緊張感あふれる練習こそが、実力アップへつながることは言うまでもない。

 山田監督は、日本協会の西口茂樹本部長と日体大での同期生。昭和終盤の1984~87年にともに汗を流した間柄だ。「(西口本部長に)卒業生もお世話になっています。本部長の指導を受けながら、私も頑張りたい」。中央と地方、立場は違うが、令和の時代の幕開けに、“昭和最後の世代”の奮戦が期待される。

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