おとなの休日 ~in 瀬田・石山~ 近江八景「瀬田の夕照」瀬田の唐橋、「石山の秋月」石山寺 「瀬田川流域・石山」悠久の流れ、今も

消えゆく琵琶湖の伝統漁法

週に一度、えり漁に船を出すのは、瀬田の唐橋前で150年前から川魚漁と料理屋を営む「うおい」(魚伊商店)4代目、井上淳一さん(82歳)。「昔は1日に何回も仕掛けのカゴを上げに行ったが、今は問題になった外来魚も減り、魚の数そのものが減った」。

漁獲量の大幅な減少と漁業従事者の高齢化で、琵琶湖の漁師は減少の一途をたどり、湖南では淳一さんが最後の一人に。近年の生態系の変化について、県は調査に乗り出しています。

戦のたびに崩落

歴史上の重要な舞台「瀬田の唐橋」

古くは日本書記や万葉集にも記述のある瀬田の唐橋。「建部大社の元宮は、東近江市五箇荘にあったが、飛鳥時代の“壬申の乱”の後、建部一族が守護としてこの地に移り住んだ。古来より瀬田・唐橋はそれほど重要視されていた」と建部大社・禰宜、大宮力さん。“唐橋を制するものは天下を制す”といわれ、交通・軍事の重要拠点として幾多の戦乱を経た唐橋。夕映えが美しく、歌や浮世絵の題材にもなった風情のある橋ですが、現在の姿は昭和54年に架け替えられたもの。中ノ島を挟む大橋と小橋からなり、反りのある形、欄干の擬宝珠などが往時を伝えています。

東から西(京)へ抜ける際、船での近道は強風の心配があるため、遠くても瀬田まで南下し、唐橋を渡った方が安全とされ、これが“急がば回れ”ということわざの由来にもなったと伝えられている。

川沿いの石山寺参道観光地として賑わう

日本有数の観音霊場として、また紫式部が源氏物語を起筆した寺としても知られる石山寺。参道の和菓子店、茶丈藤村の徳永真理亜さん(48歳)によると「明治時代からこの参道は旅館街として賑わい、昭和35年ごろには川遊びの“あみ舟”が盛んだった」とのこと。現在は参拝がてら門前菓子や名物のしじみ飯を楽しむ観光客のほか、瀬田川沿いを立木山方面へ向かう車も多く見られます。

―大人の探訪スポット―

琵琶湖の最南端、瀬田川。 遥か古代から存在していた瀬田の唐橋は、 明治22年まで瀬田川に架かる唯一の橋でした。 現在は、人や車が絶え間なく往来する生活の橋となり、 橋の下では、漁船や観光屋形船、学生たちのボートが行き交っています。 川沿いには神社や寺などの名所が点在し、観光スポットとしても賑わっています。

・01  ~川魚問屋うおい(魚伊商店)~
うおいでは漁船での“えり漁”の見学ができる。5~8月は琵琶湖の魚が増えるとのこと。 ※650円/1人(要予約)
店舗では唐橋を望む2階席で味わう鰻料理が評判。川魚の佃煮、鮒ずしの加工品なども手土産として人気。 TEL/077-537-0181 定休日/火曜日
・02  ~立木観音 立木山安養寺~
本尊:聖観世音菩薩 弘法大師が42歳の厄年に開いたことから、厄除け、心願成就などで古来より広く信仰される。観音堂までは約800段の石段を上る。新西国霊場第二十番、浄土宗。
・03  ~大本山 石山寺~
747年、寺名の由来となった蛙灰石(天然記念物)の上に創建。源頼朝より寄進の東大門(重要文化財)、本堂(国宝)や多宝塔(国宝)、源氏の間など見どころ満載。西国巡礼十三番の札所。東寺真言宗。
・04  ~志じみ茶屋 湖舟(石山寺門前)~
志じみ釜飯の他、志じみ時雨煮やしじみ醤油等土産物も人気。
・05  ~小松家(石山寺門前)~
出来立てにこだわり、炊きたてのしじみ飯と毎日製粉するそば粉を使った風味豊かな二八そばが自慢。
・06  ~茶丈 藤村~
銘菓「たばしる」などの生菓子のほか、店内では瀬田川を眺めながら甘味メニューや軽食が楽しめる。 定休日/火曜日(祝日の場合は営業) ~石山の石にたばしるあられかな 芭蕉~

取材:2018年12月

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