4月7日に大阪のこれからが決まる「大阪都構想」の歴史と未来

4月7日に行われる大阪府知事選大阪市長選。ともに「大阪維新の会」の松井一郎大阪府知事と吉村洋文大阪市長が辞任し、入れ替えで立候補する「ダブル・クロス選挙」となりました。対立候補は知事選が、橋下徹府政下で活躍した小西禎一元副知事、市長選が柳本顕元大阪市議会議員。小西氏と柳本氏は、自民党と公明党の正式な支援を受け、国民民主党、立憲民主党、共産党の自主的支援を受けています。つまり、お馴染みの「維新対他の全既成政党」の図式です。

大阪で何が起きているのか、歴史を紐解く

2008年2月、自民党大阪府連の推薦と公明党本部の支持を受け知事となった橋下徹氏は、2010年1月に二元行政の解消を目指して都構想を唱えました。そして、同年4月に地域政党「大阪維新の会」を設立。2011年4月、統一地方選に挑み府議会で単独過半数、大阪市議会と堺市議会でも第1党となりました。

大阪維新の会が第一党に

同年5月の府議議会で議員定数を21名削減し88名にする条例を提案し可決、また都構想を本格化させるため「大阪府域における新たな大都市制度検討協議会」を設立する条例を成立させるなどしました。

「大阪維新の会」としても同年11月に「大阪都構想推進大綱」を作りました。これが同月に行われたダブル選挙で知事・市長の共通マニュフェストとして、橋下氏が都構想実現への一歩、と訴え、そして知事から市長に鞍替えした橋下氏、知事の後任として立った松井氏がともに当選しました。

この勝利で、大阪府と大阪市は共同で都構想の設計図作りを行うことになりました。堺市の参加なしで「大阪にふさわしい大都市制度推進協議会」が2012年4月に立ち上がり、「大阪維新の会」の高い人気を背景に、同年8月には「大都市地域における特別区の設置に関する法律案」(以下「特別区設置法」)が国会で成立し「都構想」を実現する素地は整いました。そして2013年1月には4つの区割り案が完成、特別区設置法に基づいた大阪府・大阪市特別区設置協議会(以下「法定協議会」)が検討の場となりました

都構想は混乱へ

法定協議会は同年2月から始まりますが、同年9月の堺市長選で維新候補が敗れ、堺市の不参加が続行されてから混乱します。区割り案否決から、橋下市長は「法定協議会」の在り方に対する民意を問う市長選を2014年2月に実施。この選挙は橋下氏の圧勝。にもかかわらず「都構想」賛成派と反対派の「法定協議会」での攻防は続き、4区案から「5区/北区・中央区分離案」となり同年10月完成の協定書案は大阪府市両議会で否決されました。
しかし、同年12月の衆議院議員選挙を境に公明党が「住民投票を行うことには賛成する」、と転じて2015年1月に再開された法定協議会で協定書は承認。同年3月に大阪市議会、大阪府議会でも承認され住民投票へと続く道筋が出来ました。

同年5月17日に行われた住民投票は大阪市を「5区」に分割する案を軸として争われ、反対が70万5585票で賛成の69万4844票を僅差で上回り、「都構想」は頓挫しました。対案として「大阪戦略調整会議」が行われましたが、実質的な協議はないまま同年11月に「大阪維新の会」にとって2度目のダブル選挙を迎えました。この選挙で松井氏が知事に再選、大阪市長には引退表明していた橋下氏に代わって吉村洋文氏と維新が勝ち、再度「都構想」を俎上に載せました

大阪都構想とは

大阪府と大阪市がそれぞれ行ってきた広域行政を一元化し、地域のことを地域で決定できるようにする構想です。

①大阪市を廃止
②区長が大きな権限を持つ特別区(現在の案は4区)に分割
③大阪市が財源や行政権のうち広域行政に関わるものを大阪府に譲渡
④残りの市民税など地域行政に関わる財源や行政権を「特別区」に分割

府市の二重行政の解消、広範囲な地域を対象とした行政サービス、小さな自治体=特別区によるきめ細やかな地域サービス、を実現する新しい統治機構を作り出すのが狙いとなる構想です。

大阪維新の会が勝利した場合はどうなる?

今回の「ダブル・クロス選挙」で維新が勝った場合、知事・市長選と同時に行われる府議・市議選の結果が大きく影響します。現状では公明党などの協力がなければ、住民投票までたどり着けません。知事・市長選で維新が勝利し、府市の議員過半数も確保、その上で住民投票で賛成多数を勝ち取ることが「都構想」が実現への流れとなります。

大阪維新の会が敗北した場合はどうなる?

維新が完敗した場合は、現状と何も変わらないことになると思われます。知事と市長が維新と反維新に分かれ、議会も過半数を取れた側と取れなかった側に分かれた場合。この場合は「二度と府市合わせ(不幸せ)に戻してはいけない」と橋下氏が叫ぶように、重要な行政事項が決まらず、停滞するような可能性が生まれます。

この記事は選挙ドットコムとYahoo!ニュースによる連携企画記事です。

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