スピーカーも完全ワイヤレス時代、しかも驚きの音質。KEF「LSX」の値付けは安すぎる!

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KEFから新たなワイヤレススピーカー「LSX」が登場した(関連ニュース)。高音質と多機能を同居させ好評を博しているワイヤレス対応アクティブスピーカー「LS50 Wireless」を大幅にコンパクト化しつつデザインにも磨きをかけ、さらには左右間のケーブルの必要がない “フルワイヤレス”までも実現した注目モデルだ。本レビューでは、オーディオ性能と実際の使い勝手の両面から土方久明氏がチェックする。

KEF「LSX」(ブルー)

美しいデザインと多機能を両立した “フルワイヤレス” スピーカー

そのスピーカーは、コンパクトで設置性に優れ、高音質で機能的。英国のオーディオメーカー KEFから登場したワイヤレス・アクティブスピーカー「LSX」である。2016年に発売された「LS50 Wireless」に続く、KEFの新しいワイヤレススピーカーだ。

グロスホワイト/マルーン/オリーブ/ブルー/ブラックの5色がラインナップ。価格はオープン。想定価格はグロスホワイトのみ129,980円(税抜)、そのほか149,980円(税抜)

近年、DSPやデジタルアンプ、そしてWi-Fiを利用した音声伝送技術が進化したことで、ワイヤレスでもオーディオファイルが満足できる音質を備えた魅力あるスピーカーが多く登場している。LSXも間違いなくそのひとつである。

LSXのアドバンテージは大きく3点ある。1点目は、左右スピーカーが独立した “フルワイヤレス” スピーカーであること。2点目は現代の音楽再生事情に合致した多彩な再生ソースへの対応力。そして3点目は小型でデザインが美しく、設置性に優れていることだ。これらの特徴を詳しく紹介していこう。

小型でデザインが美しく、設置性に優れる

■先進的なアプローチを行う老舗メーカー「KEF」

KEFは1961年にロンドン南東のケント州で設立された老舗メーカー。数多くのスピーカー名機を発表してオーディオファイルを魅了してきた。現在はトップモデルの「MUON」を筆頭に、「BLADE」「REFERENCE」「R」「Q」など多くのシリーズを持ち、2チャンネルのハイファイオーディオからAVシアター用途まで、幅広いモデルをラインナップする。

REFERENCE5
LS50 Wireless

近年のKEFは、先進的なアプローチでスピーカーを開発するメーカーとして注目度が上昇中だが、そんな同社による斬新な新モデルが「LSX」なのである。まず、基本デザインは大ヒットモデルの「LS50」や「LS50 Wireless」の要素を継承しているが、外形寸法が大幅にコンパクトになっているのがポイントだ。

■バイアンプ駆動のD級アンプ、高度なデジタル処理、多彩なネットワーク機能

その小型エンクロージャーの中には、低域用に70W、高域用に30WのクラスDアンプが搭載されており、バイアンプ駆動を行う設計。また高域/低域にそれぞれD/Aコンバーターを1基ずつ搭載し、DSPで帯域分割や位相制御を行うなど、LS50 Wirelessの開発で培われたデジタル処理技術を惜しげも無く投入している。

独自のDSP技術を搭載する
スピーカー周辺のバッフル形状を最適化

ワイヤレス・アクティブスピーカーとして、対応ソースが強力であることもLSXの大きなアドバンテージだ。2.4GHz/5GHzのデュアルバンドWi-Fiに対応し、ホームネットワークを利用して、DLNA/UPnPネットワーク再生や、ストリーミングサービスのTIDAL(日本では未スタート)、スマホ/iPadなどタブレット端末内の音源の再生、さらにSpotify ConnectやAirPlay 2(2019年に対応予定)の再生も可能とする。そして、なんとRoon Ready対応機でもある。

メイン側スピーカーの背面部。各種入力端子を搭載する

さらに、TOS端子の光デジタル入力や3.5mmステレオミニによる有線ライン入力も装備。また、背面のUSB端子は5V/2Aの電源供給用で、Chromecast Audioなどを組み合わせる際には、本機から電源供給を行うことができる。

設置性が高く多彩な再生ソースに対応するため、様々なライフスタイルに馴染む

LSXがあれば、ハイレゾ音源からストリーミング、テレビの光デジタル出力までカバーできてしまう。なんという全方位的な対応力なのだろうか。

自宅環境で音質と使い勝手を徹底的に検証

伝統かつ先進の同軸ドライバー「Uni-Q」を搭載

もちろん、多様な対応ソースへの対応を受け止めるスピーカー部の音質対策も徹底している。まずドライバー周りから見ていくと、KEFのお家芸ともいえる位相特性に優れた同軸ユニット「Uni-Qドライバー」を採用している。

新設計された第11世代のUni-Qドライバーを搭載

本機に搭載されたのは、第11世代のUni-Qドライバーで、本モデルのために新規設計されたものだ。115mmのマグネシアム/アルミ合金ウーファーと、19mmのベンテッド・アルミドーム・トゥイーターで構成されている。また、本機もLS50 Wireless同様に、KEF独自のDSPアルゴリズム「Music Integrity Engine」を搭載し、タイムアラインメントと位相制御を行なっている。

115mmのマグネシアム/アルミ合金ウーファーと、19mmのベンテッド・アルミドーム・トゥイーターで構成

セッティング簡単。設置してすぐに素晴らしいサウンドが楽しめる

基本的なディメンションが分かったところで、早速試聴をはじめたい。今回は、自宅環境でLSXの音質と使い勝手を徹底的に検証した。

包装箱からLSXを取り出し、筆者所有のスピーカースタンドに設置。あとは、2本のスピーカーにそれぞれ電源ケーブルを挿して終わり。手順はたったこれだけだ。LSXはフルワイヤレス仕様なので、LS50 Wirelessのように左右のスピーカーをLANケーブルで接続する必要もない。

アンプやプレーヤーを用意する必要もないし、スピーカーケーブルを接続しなくてよいので、設置の自由度は比べものにならない。これには隔世の感がある。そして詳しくは後述するが、DSPにより高度な音質調整も行えるため、設置場所による音の影響も抑えることができる。スピーカースタンドではなく、棚や机の上に置いても良い音を楽しめるのだ。

左右のケーブルがないため設置性が高い
スタンドに乗せた状態

本機の操作は、iOS/Android対応の専用アプリ「KEF Control App」「KEF Stream App」から行う。前者はセッティングやEQのコントロール、音量調整などが行え、後者はDLNAやストリーミングの再生操作に用いる。

KEF Control Appのアプリ画面。様々な設定を行うことができる

細部までこだわったデザインと、インテリアにも溶け込む質感を備える

実物を見て、改めて感心したのはそのデザインだ。著名な家具や工業製品を数多く手がける英国のデザイナー、Michael Young氏が監修を行なっているというのだが、一般的な小型スピーカーからは考えられない本格的な意匠と質感を備えている。

“KEF” のロゴは主張しすぎない絶妙のバランス

カラーバリエーションは5色だが、ホワイト以外の各色は、北欧デンマークを代表するファブリックメーカー「Kvadrat」社製の高級ファブリックが貼られたエンクロージャーがトレードマーク。これに合わせてUni-Qドライバーまでカラーコーディネートされているのだから素晴らしい。

エンクロージャーにはファブリックが貼られる
背面はヒートシンクを兼ねた金属パネルとなっている

エンクロージャーを見回しても一切ネジが見えない。背面はヒートシンクを兼ねた金属パネルになっているが、これらもファブリックに合わせた色を採用するという、こだわりの仕様だ。

ライフスタイルが多様化する中で、オーディオメーカー各社がプロダクトデザインにいっそう注力する傾向を感じるが、そういった面でもLSXのデザインは一歩先を行っている。

試聴をはじめた瞬間、広大なサウンドステージが展開

もちろんデザインだけではなく、キャビネットの設計は音質を最優先に設計されている。LS50にも採用された湾曲型のフロントバッフルを引き続き採用し、高密度なキャビネット素材によって剛性を確保し、不要共振による付帯音を防止している。

生活の中で音楽を聴くといった用途にも適している

音楽を再生した瞬間、広大なサウンドステージが展開

KEF Control AppでLSXをWi-Fiネットワークに参加させる初期設定を行えば、事前準備は完了だ。KEF Stream Appを立ち上げ、まずは手持ちのスマートフォンに保存したハイレゾ楽曲から、女性ジャズボーカル、キャンディス・スプリングス『インディゴ』(44.1kHz/24bit FLAC)を再生した。

試聴を行う土方氏。小型のエンクロージャーにも関わらず、低域の量感がしっかりと出る

音が出た瞬間、左右のスピーカーの外側に広大なサウンドステージが展開し、その中央にピンポイントでボーカルの音像が出現する。LS50 Wirelessと同様に、驚くほど位相が整った音だ。また、LS50 Wirelessよりもふた回り以上小型のエンクロージャーにも関わらず、低域の量感がしっかりと出る。ここは予想以上の仕上がりだ。

LSXは192kHz/24bitまでの音源の再生に対応する(内部処理は96kHz/24bitまで)しており、ハイレゾの再生にも対応している。オーディオファンのマインド的にはDSD再生にも対応してくれればなお嬉しいが、このあたりはより幅広いユーザーを想定しての仕様だろう。

なお、フルワイヤレス状態の場合は48kHz/24bitまでの再生に対応(再生自体は192kHz/24bitまで可能)。左右スピーカーをLANケーブルで接続する有線接続を行うことも可能で、その場合は96kHz/24bitで再生を行うことができる。

左右のスピーカーをLANケーブルを用いて有線で接続することもできる。また、左右のスピーカーの入れ替えもアプリから設定可能

ワイヤレス接続と有線接続を同じ音源を聴いての比較も行ったが、音質的な差は厳密に試聴してやや感じるという程度だった。したがって以後は、2本のスピーカーをワイヤレスで接続するフルワイヤレスの状態でレビューしている。

続いて、NASの音源をネットワーク再生する。人気Jazzシンガー、ホセ・ジェイムスのニューアルバム『リーン・オン・ミー』(44.1kHz/24bit)では、曲を通して力強いベースが入っており、その再現力が音楽性さえ左右する。小型のわりに低域が力強く出るLSXは、低重心で弾力のあるベースを楽々と表現し、口元のしまったボーカルが立体的に定位するのだからたまらない。これら2曲を聴いて、LSXがサイズを超える再生能力を備えていることがわかった。

DSPを用いた高度な音質調整機能。設置場所に最適な設定が行える

操作アプリ「KEF Stream App」の仕上がりにも言及したい。ほぼ全ての操作をアプリで行う本機の場合、アプリの仕上がりが使いやすさを左右するのだが、KEF Stream Appの画面UIは直感的に操作できレスポンスも機敏だ。また、優れたデザインの専用リモコンも付属するので、ちょっとした音量調整や、家族の皆が共同で使う場合にも役立つ。唯一注文をつけるなら、音量を変えるときにKEF Control Appにリンクして、そこから変えなくてはいけないところぐらいだ。

KEF Stream Appの画面
再生中の曲の画面

DSPを用いた高度な音質調整機能を備えていることもLSXの特長だ。人気ポップアーティスト、チャーリー・プースの「Voicenotes」をストリーミングで聴きながら、調整機能を試してみた。

専用リモコンも付属する

この先進的な内容のLSXは大バーゲンプライス

音質調整機能はアプリから操作できるのだが、「ベーシックモード」と「エキスパートモード」という2つの機能に分かれている。

ベーシックモードでは、最初にスタンド設置(On a Stand)/デスクトップ(On a Desk)という2つから設置モードを選択。スタンド設置では壁からの距離・部屋の響き・部屋の広さ、デスクトップ設置では、テーブルの前端からの視聴者までの距離・部屋の響き・部屋の広さを指定できる。

小型なので、机の上に乗せるといったことも可能だ。もちろん、机に合わせた調整モードも備えている

このパラメーター変更による音質向上効果はかなり強力だ。低域以外の要素の調整も行っているようで、スピーカーの物理的な位置を綿密に調整してやっと得られるような音が簡単に出せてしまう。もはやこういう時代なのだ。たいへん実用的な機能である。なお現在のところ、KEF Control Appは日本語表記に対応していないので、ここはアップデートに期待したい。

スタンド設置(On a Stand)の設定
デスクトップ(On a Desk)の設定

話題のroonに対応したRoon Ready対応機

LSXは、話題の音楽再生ソフト「Roon」にもRoon Readyとして対応する。Roonは、「音楽を再生する作法」と「音楽を知る作法」を融合した、今注目のソリューションが利用可能だ。

iPadからRoonのアプリを立ち上げ、クラシックの交響曲、アンドリス・ネルソンス『ショスタコーヴィチ:交響曲 第4番&第11番「1905年」/ボストン交響楽団』を聴いた。サウンドステージは広大で、オーケストラを構成する1つ1つの楽器も明瞭に表現、小型スピーカーとは思えないスケールの大きな音に感心した。

Spotify Connectにも対応する

ちなみにLSXはSpotify Connectにも対応しており、Spotifyの音楽も簡単に再生できる。一般ユーザーにおいては、まずこれが主な再生方式になるだろう。このように、手軽な試聴スタイルからマニアも納得のコアなスタイルまで全方位的に対応するのが、LSXの大きなアドバンテージだ。

多くのワイヤレススピーカーをレビューしてきた筆者から見て、LSXの先進的な内容と音質を考えると、正直この値付けは安すぎるくらいなのではと感じた。

LS50 Wirelessに比べて大幅にコンパクトになりデザイン性も向上しているし、左右スピーカーを接続するケーブルさえも廃したことで、LSXはこれまで以上に、生活空間の様々な場所に設置できるようになった。

コンパクトな筐体に機能を凝縮。十分な低音再生能力をもち、位相特性に優れた音を奏でる

そして驚くべきはその音質。キャビネットはコンパクトに仕上がっているにもかかわわらず、十分な低音再生能力がある。そしてUni-Qドライバーと独自のDSP技術を組み合わせることで、位相特性に優れた素晴らしい音が出てくる。今回聴いたような音像やサウンドを、パッシブ型スピーカーとアンプの組合せで得るとしたら、LSXの価格よりずっと大きな予算が必要になるはずだ。

また、アプリの仕上がりも良く、設置環境に合わせた音質チューニングもできる。LSXは音質・設置性・デザインと3拍子揃った、新世代の幕開けを告げる素晴らしいスピーカーだと断言したい。

(土方久明)