ネット選挙運動 アプリに動画、ライブ配信… 組織力を補う 

多くの有権者とつながろうと各陣営はSNSなどを駆使する

 専用アプリに動画、ライブ配信-。7日投票の県議選を前に、一部の候補者はインターネット上でも火花を散らす。業界団体や労組などの組織票が手薄な候補者らが、有権者とのつながりを求めて工夫を重ねる。拡散力や双方向性などネットならではの特性を生かした取り組みを取材した。
 「フェイスブックやツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)は、ほかの候補者もやっている。何か違うことをしたかった」
 この候補者は自らをアピールする専用アプリを約1カ月前から配信。アプリを開くと個人演説会の案内が表示される。さまざまな画像や後援会通信を見ることができるほか、ボランティア募集にも活用する。
 こちらからの発信ばかりではない。「アンケートをしたり、陳情を受け付けたりする機能も加えられる」。ダウンロード数は想定の2倍に上り、アプリを見てつじ立ちに来る人もいるという。
 別の候補はリアルタイムで動画を配信し、視聴者からのコメントも流れるSNSの「ライブ機能」を使う。3月上旬から大学生や地元の若手経営者らをゲストに招きトーク番組のように進める。ライブ中に上がる質問にも反応。視聴者の反応は「コメントを取り上げてもらった」などと上々だ。
 自らが取り組んだ地域活動などを1分程度の動画にまとめ、公開している候補も。ドラマチックな音楽を流し候補自らがナレーションを吹き込んだ。「臨場感を持って伝えられるし手軽に見てもらえる」。動画は計8千回以上再生された。
 この候補は「組織票が少なかったり、お金がなかったりする候補にとってSNSは生命線。無料な上、拡散してもらえば波及効果もある」と強調。一方で限界も感じる。「実際に会って握手する時の熱量にはかなわない。リアルの活動とうまく連動させないと」
 投票率の向上や若者の政治参加を促そうと、2013年に解禁されたインターネット選挙運動。その活用や有権者の関心、盛り上がりは“発展途上”だ。
 日ごろ、SNSを使っている長崎大3年の田中和人さん(20)は「内容に共感したり、デザイン性が高かったりしないと友人に拡散するまではいかない。ブロガーなどプロのノウハウを生かしてみてもいいのでは」と提案。さまざまな候補者のSNSを視聴したという県内の男性有権者(39)は「個人演説会は時間に余裕のある一部の人のためのものだった。それが地縁や血縁、高齢者が中心になる選挙を招いてきた。(SNSでは)将来に夢を持てるような言葉を語り、政策を示して若い世代を政治にひきつけてほしい」と注文する。

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