世界ラリークロス、新たな電気自動車構想『プロジェクトE』発表。2021年の完全EV化は断念か

 4月6~7日に2019年シーズンの開幕戦を控える、WorldRX世界ラリークロス選手権のプロモーターであるIMGモータースポーツは、これまで協議を続けてきた電気自動車によるラリークロス選手権について、既存のスーパーカー選手権とは別クラスにすると発表。新たに2021年の創設を目指すフルEVによる新選手権のコンセプト『Projekt E(プロジェクトE)』をアナウンスした。

 FIAやIMG、そしてシリーズに興味を示したマニュファクチャラーとの間で長らく協議が続けられてきたEVラリークロスの新シリーズは、現在のトップカテゴリーであるRXスーパーカーをEVクラスに代替するという案が示されてきたが、メーカーの関心を充分には集められず第1段階ではその導入を2021年まで延期することを発表。

 さらに3月29日の計画承認期限までに必要な賛同票を集めることができなかったとみられ、トップクラスをEV化する案は実現しなかったとみられる。

 これを受けて、レースウイークの火曜に入りIMGが発表した完全電気自動車によるラリークロス競技の新形態は、現在のICE(内燃機関)のチャンピオンシップと同一週に、エレクトリック・ラリークロスカーによる別選手権のレースを開催するプランだった。

 プロジェクトEと名付けられた新たなコンセプトは、現行のICE搭載RXスーパーカーを頂点に据えたまま、新型フルEVスーパーカーでの選手権を別枠で開催するというもの。

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この2年間の協議では、共通EVパワートレーンの供給なども検討されてきた
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「IMGは2017年時点から、EVによるラリークロスが選手権の週末の一部として機能することを約束してきた。今日その目標に同意したことを発表できてうれしく思っている」と語るのは、WorldRXのマネージングディレクターであるトーベン・オルセン。

「我々のショーケースとしての狙いは、多くのカスタマーが日常的に接している生産車をベースとしたモデルを使用し、ラリークロスの厳しい競争環境の中で少なくとも2021年には将来のモビリティに関連する最新の技術を導入し、ファンに披露することにある」

「ラリークロス競技にフルEVの電化技術を導入するための戦略について、我々は多くのマニュファクチャラーと2年近く議論してきた。しかし最終的にはフルEVの世界選手権を実現するのに充分な数の賛同は得られず、マニュファクチャラー側にまだフルコミットの準備ができていないことが明らかになった」

「しかし、このプロジェクトEは2017年来の約束を推進する重要で前向きな一歩になると考えている。プロジェクトEにより、我々は新しいテクノロジーを取り入れ、関連性を保ち、電気自動車が速くて楽しいことを証明することが可能になると思う」

 シリーズ形式や参加予定マニュファクチャラーやマシンなどの詳細については今後数カ月の間にも明らかにされる予定だ。

今季からMonsterEnergy RX Cartelとして参戦するアウディS1 RX EKSクワトロ
XITEレーシングからフル参戦するオリバー・ベネットのミニ・クーパーSX1 RXスーパーカー
2019年のWorldRX世界ラリークロス選手権開幕戦は、今週末4月6〜7日にアブダビのヤス・マリーナ・サーキットで幕を明ける

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