FIA、ツーリングカーレースのエントリーレベルを支えるローコスト新規定を2020年に発足か

 FIAは2020年中盤の発足を予定している新たなツーリングカー規定の詳細を発表し、NGTCやTCRなど現存する主要ツーリングカー規定よりさらなるローコスト化を推し進めたエントリー・ツーリングカー規定導入の意向を示した。

 3月に開催されたWMSC世界モータースポーツ評議会では、国内選手権やリージョナル選手権としてジュニア・ツーリングカー・クラスの開催計画が確認され、その主要な意図としてエントリーレベル・シリーズの導入に向け各国で共通のフレームワークを採用するという認識が示された。

 その内容はBTCCイギリス・ツーリングカー選手権やTCRドイツなどの各主要選手権に向けた登竜門的役割を果たすシリーズが想定され、現在イギリスで開催されているルノー・クリオカップUKやミニ・チャレンジに近い、1.6リッター・クラス車両を用いる計画だという。

 プロジェクトの構想としては、未だ実現してはいないものの2018年創設に向けアナウンスされたドイツの『TC Light(TCライト)』に近しい内容になるとみられ、2016年限りで終了となったDTCドイツ・ツーリングカー・カップに変わる新シリーズとしてドイツ国内で活動するTCO(インターナショナル・ツーリングカー・オーガニゼーション)が発表した当時のプロジェクト草案では、アウディA1、フォード・フィエスタ、オペル・コルサ、セアト・イビーザなど、各マニュファクチャラーのA~Bセグメントにまたがるコンパクト・ハッチバックがターゲットとなっていた。

英国のルノー・クリオカップUKやミニ・チャレンジなどに並ぶエントリーレベルのシリーズを想定する
2017年に発表された『TC Light(TCライト)』はBoPを使用しないアイデアだった

「シリーズの名称はまだ決まっていないが、ルノー・クリオ(日本名:ルーテシア)サイズのエントリーレベル車両を用いたツーリングカー・シリーズを想定している」と語るのは、BTCCを運営するTOCAの代表であり、FIAのツーリングカー・コミッション理事も務めるアラン・ゴウ。

「このコンセプトは前回のWMSCで承認されており、レギュレーションに関しては次回のWMSCで議論の上、承認される運びになるだろう」

 同じくFIAのサーキット選手権ディレクターであるフレデリック・バートランドは「この計画は異なる車種間でBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)システムを機能させ、数多くのブランドが参入する間口を広げるとともに、新たなステップアップの道筋を作るためのものだ」と付け加えた。

「WTCR世界ツーリングカー・カップやBTCCを筆頭にツーリングカーのトップレベル・シリーズは数多く存在し、世界中のあらゆる国でTCRシリーズが開催されているが、我々はそこへ至るエントリー、ボトムエンドを再構築しようとしている」と説明するバートランド。

「現在レギュレーションを策定中で2、3のマニュファクチャラーからもサポートを得られている。願わくば、2020年の5月には最初のチャンピオンシップが開催できるようにプロジェクトを推進していきたいと考えている」

 前述のTCライトが発表していたテクニカルレギュレーションによれば、マシンは240PSを発生する1.6リッターのターボエンジンを搭載した前輪駆動のみとなり、6速シーケンシャル・ギヤボックスを搭載し最低重量はドライバー込みで1160kgに設定。そして定石のBoPシステムは採用せず、すべての車両は共通規定リヤウイングとベース車のホワイトボディを使用することが義務付けられていた。

車両製作コストも抑えられれば、新たなマニュファクチャラーの参入も見込めるか
マシン購入とメンテナンス費用をを抑え、TCRを目指すアマチュアドライバーのエントリーレベル・ツーリングカーとしての役割を目指す

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