<社説>塚田国交副大臣更迭 利益誘導は行政ゆがめる

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 本当のことを言ったのか、それとも、うそをついたのか。作り話にしては内容が具体的で、込み入っている。「忖度(そんたく)」発言で事実上、更迭された塚田一郎国土交通副大臣(参院議員)のことだ。

 塚田氏は、山口県下関市と北九州市を結ぶ「下関北九州道路」の国直轄調査への移行に関し、安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相が言えないので私が忖度した―などと述べた。北九州市で1日に開かれた福岡県知事選の自民党推薦候補の集会でのことだ。

 下関市は安倍首相の地元だ。北九州市は麻生副総理の中選挙区時代の地盤である。事実であれば、利益誘導にほかならず、断じて許されない。

 塚田氏は発言が問題化するや、事実と異なっていたとして撤回し、謝罪する旨を文書で発表した。これを額面通り受け取っていいのか、にわかには判断しかねる。

 自民党の吉田博美参院幹事長が副大臣室を訪れ「これは総理の地元と副総理の地元の事業」などと述べたことを紹介するなど、細かいやりとりにまで言及していたからだ。

 西日本新聞の報道によると、塚田氏は、吉田氏との面談について触れた上で「私は物わかりがいい。すぐ忖度します。『分かりました』と。総理とか副総理はそんなこと言えません。私は忖度しました。(中略)新年度の予算で国直轄の調査計画に引き上げました」などと明言している。

 下関北九州道路は財政難などから2008年に凍結されていた。調査費計上が決まったのは、吉田氏から要望を受けた後だ。吉田氏は関与を全面否定するコメントを発表したが、そのような趣旨のやりとりは本当になかったのだろうか。国民に向けてきちんと説明すべきだ。

 九州と本州を結ぶ幹線道路は、関門国道トンネル(1958年開通)、関門橋(73年開通)があるが、老朽化が進んでいる。補修工事などで渋滞したり、通行止めになったりすることが多いという。

 このため、地元自治体や経済関係者は「第3の関門道」として下関北九州道路の整備を求めてきた。関門トンネル、関門橋の代替機能を確保する意義は理解できる。

 とはいえ、有力な政治家の「我田引水」で恣意(しい)的な予算配分が行われるのなら、公平公正であるべき行政をゆがめてしまう。

 塚田氏は4日の参院決算委員会で「大勢の会合で熱が入った。うそを言っているとの認識で発言したわけではない」などと釈明した。

 安倍首相は「有権者の前で事実と異なることを述べたのは重大な問題だ」と答弁したが、どうしてそう言い切れるのか。塚田氏を任命した首相には、発言の真偽を含め事実関係を調べて明らかにする責任があるはずだ。

 問題の核心は忖度がはびこる安倍政権の体質にある。副大臣の辞任で幕引きというわけにはいかない。