社説:残業規制の開始 企業の意識が問われる

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 日本のあしき労働慣行を改める転換点としたい。

 働き方改革関連法が今月施行され、罰則付きの残業の上限規制が始まった。

 長時間労働に歯止めをかけ、過労死や健康被害を防ぐのが大きな狙いだ。

 規制の数値の甘さなど課題はあるが、各企業は生産性や働きがいといった労働の質を高め、ワーク・ライフ・バランスの充実を目指してほしい。

 新制度では残業時間の上限を「月45時間、年360時間」とした。繁忙期などは特例で年6カ月まで月45時間を超えることを認めるが、「単月100時間未満」といった条件を満たす必要がある。

 違反した場合、6月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。これまで青天井だった残業を減らす効果が期待できる。

 だが、月100時間の残業は労災認定の目安「過労死ライン」の水準に匹敵する。また、年720時間以内との条件には休日労働を含んでおらず、休日出勤が横行する可能性も懸念される。

 企業には業務の効率化や生産性向上など一層の抑制努力が求められる。一方、残業削減に伴う収入減への配慮も要る。対策の果実を還元するなど、働く意欲をそがない賃金体系の再構築が急がれる。

 4月スタートの対象は大手企業のみで、中小企業は適用が1年間猶予される。だが、中小企業庁が実施した調査では「取引先の大企業が残業を減らすため下請けの納期が厳しくなった」といった回答もあった。大手の「しわ寄せ」が中小に行くなら見過ごせない。

 建設業、自動車運転業務、医師への適用が5年間猶予されることも気がかりだ。長時間労働がより深刻な職種だけに今後、働く人の視点や構造的な問題を踏まえた十分な議論が必要ではないか。

 高収入の一部専門職を規制の対象から外す「高度プロフェッショナル制度」も始まったが、労働時間が際限なく広がる懸念は拭えていない。労働実態の把握や検証を徹底すべきだ。

 来年度からは、「同一労働同一賃金」の制度が順次導入される。今春闘では改革を先取りし、導入を決めた企業もあった。深刻な人手不足が背景にあるとみられる。

 人口・産業構造が変わる中、働き方改革は経営の存亡に関わり、企業の意識改革が問われる。人材確保や労働環境改善に向け、実効性のある取り組みが求められる。国も運用の在り方を監視し、不断の見直しに努めてもらいたい。