「娘の結婚、大丈夫かな?」 離婚による母子世帯の不安

語らう母子。一人親家庭への支援強化や子どもの貧困対策が近年進んでいる(写真はイメージ)

 「自分が子どもの頃、友達の中に、離婚して一人親の子はいなかったと思う。今は職場で女性の同僚と、どちらともなく『バツイチ? 私もよ』という会話になることがよくある」
 県内の50代女性、中村由紀さん(仮名)は5年前、約20年間の結婚生活にピリオドを打った。10代の娘2人と実家に戻り、パートなどで生計を立てている。「住む所があったから家を出られたというのはある。なかったら別れるのは厳しかっただろうな」
 元夫は知人の紹介で知り合ったサラリーマン。中村さんは専門学校を卒業して働いていたが、仕事を辞めて専業主婦になった。別れた理由を多くは語らないが「信頼できなくなった」。
 娘たちも「離婚してよかったんじゃない」と言ってくれる。母子3人の仲は良好。そろって同じ有名アーティストのファンクラブに加入し、連れ立ってライブに出掛ける。

 2016年度の厚生労働省調査によると、全国の母子世帯は推計123万2千世帯、父子世帯は同18万7千世帯。いずれも4分の3以上が離婚によるものだ。母子世帯の平均年収は243万円と、父子世帯(420万円)の半分程度。働く母親の半数近くがパート、アルバイト、派遣社員といった非正規雇用で、母子世帯の収入の低さや不安定さが課題となっている。
 09年に厚労省が、低所得家庭で育つ18歳未満の子の割合(子どもの貧困率)の発表を開始。12年は過去最悪の16.3%となり、子どもの6人に1人が貧困下にある現実が衝撃を広げた。13年成立の子どもの貧困対策推進法により、政府は対策拡充に着手。都道府県を通じて近年、一人親世帯に支給される児童扶養手当の増額や、親の就労支援の強化などが進んでいる。
 県によると、17年度の県内の母子世帯は推定約1万6千世帯、父子世帯は同約1200世帯。県子どもの貧困対策推進方針(16~19年度)は、一人親世帯で「経済的理由」から大学などに進学しなかった子がいる世帯の割合を、15年度の52.1%から50%以下にするなどの目標を掲げている。

 低所得世帯対象の大学、短大などの高等教育無償化も、政府が20年度以降の実施を目指している。中村さんは「もう少し早く施策の充実が進んでいれば、うちも恩恵にあずかったのだけれど」と苦笑する。
 同じ境遇の友人とは「(離婚すると)楽よねえ」と言い合う。「ダンナの世話をしなくてもいい。別れて後悔している人には、会ったことがない」。自身も全く後悔はない。「ただ、娘が結婚するときに一人親のことが問題になったら、娘に申し訳ないな」。かすかに頭をよぎる不安が、杞憂(きゆう)に終わってくれたらいいなと思う。

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