第9回「春うらら、本日も順調に高次脳!」

どん!

というわけでーー わたくし、脳卒中で脳の動脈がブチ切れてから、入院したり退院したり、あれこれあって半年が過ぎ、そろそろ医師の診断が後遺症を確定する重大な時期になった。押忍!

脳卒中の後遺症ていうのは、その後のリハビリによって回復する部分もあり/しない部分もあり、だから発症して後6ヶ月の今になって、初めて症状が確定される。

はっきり言って、脳の血管が破れたり詰まったりしたてダメージを受けて、どういう不都合が生じたかーー 後遺症の現れ方は千差万別、人によって全然ちがうわけ。運動機能の障害、記憶の障害、失語症、空間認識の喪失、注意力の喪失、麻痺痺れ…とか。 比較的わかりやすいものから、判別が難しいものまで、さまざまな症状が複雑に重なり合って、溶け合って、関係しあって、関連して…マーブル色になって、周囲から見ているとなんだかぼんやりとアヤフヤな、しかし本人や家族にとっては歴然と、恐ろしいくらいハッキリと現れてしまうのが、そういった症状の総合名称としての"高次脳機能障害"だったりするわけです! どうだどすこい!

セガレにスカジャンを買いました。

それでーー わたくし、今も病院で、リハビってきたばかりで。と言いつつ、この瞬間は銀座にいて、数寄屋橋のソニーパークに座ってため息をついてる。はー、もうやんなっちゃう。

病院へは、週に一度だから、退院してから、もう十数回は通ったことになるのかな。毎回毎回、症状に合わせたリハビリをやるんだけどーー面白いな〜と思うのは、どうも世間にはステレオタイプの脳卒中のイメージというものがあるらしくーー 友人知人たちは、自然な感じで、「脳卒中で倒れときあなたは…」とか「半年前に倒れてから…」とか、なんの疑いもなく話してくるわけ。でも、わたくし別に「倒れて」ないんですよね。自分で救急車呼んで、意識があるまま入院して、開頭手術もしてないわけ。

それと同じように「病院でリハビリをしている」というと、なんか皆等しく「補助器具を使って懸命に歩い」たり、「歯を食いしばって膝の関節を伸ばしたり」するイメージがあるようで、「大変だね」と言うのだけど、もちろんそういうリハビリもあるだろうけど、わたくしのリハビリは肉体ではなく、ガーン! 脳なのです。だから、補助器具つけたりマシーンを使ったりとか、申し訳ないけども、全然やってない、ごめん!

で、ちなみにーー 関係ないけど、数寄屋橋のソニーパークが花冷えというか寒くなっちゃって、今、5丁目のライオンに移ってきた。ここのエンドウ豆は旨いよな。大ジョッキフェアてのやってて。

ロマン優光さんと。

それでーー わたくし話の続き。というか脳卒者は、アルコールを飲まない方が良いわけだ。ぐびっと これは定説です。特に脳出血経験者は、一滴も飲まない方が再発率が低いとコホート研究で出ている。コホート研究てのはつまりは追跡調査ね。しかし…これが飲まずにいられるか、ぐびぐび。しかし、ここのビールはうまいね。

それで、現在わたくし、診察を受けながら脳卒中の後遺症を確定する時期にきてるーーという話に戻るけど、どうやらここにきて、障害者の公式免許が降りそうで。等級は3級。そりゃ上には2級も1級もあって、目標は初段です! と言いたいところだが、障害の免許は書道や柔道とちがって、練習してれば取れるというものではなくて、これは運命だから。そしてねーー これが大事なんだけど、高次脳機能障害は脳の症状なので、わたくしはこの度、身体障害者ではなく「精神障害者」になるわけだったりするのです。

えーーっ!! ついにこの俺も、公式精神障害者かあ。か、感慨深い。若い時から基地外は死ね! とすれ違う人に罵られながら長い道のりだった。今の気持ちを一言で言うとーー 嬉しいような、哀しいような、あっけないような、アンビバレンツなこの気持ち、へークション! 53歳春、この季節は毎年花粉症です。

高樹沙耶さんと孫GONGさんと@大阪ロフトプラスワンウエスト。

それでネットで調べてるんだけど、偽クラシック音楽家の佐村河内が持ってたのが、聴力の障害で身体の2級ね。聴力には1級はないから2級が1番上で、だから頑張って聴こえないフリしてたんだよな〜、嘘はダメだけど。新垣さんも「彼は聴こえているはずだ!」とか、手厳しいよな。

いや、そーじゃなくて、もっとこう、本当に頑張ってる人のこと調べてるのだが、惜しい! 精神の3級じゃおカネはおりません。せいぜいが都営線が無料。メトロもJRもぜんぜん割引ゼロ。あら、携帯に各社共通で1600円割引制度あり。駐車場があちこち無料になるんだけど、車持ってない自分には関係なし。美術館がけっこうタダになる。映画が千円か…しかも付き添いの人も。

新宿駅のベルクで朗読会をやりました。

そうか。そうだ。

初めて障害の手帳をもらった記念に映画を観に行こう、と好きな子を誘ってーーという短編小説を書く。東京キララ社の「ヴァイナル文學選書シリーズの第2弾」にちょうど良い。高次脳機能障害という聞きなれない病気の視点を通しての春の一日の物語。舞台は渋谷。PARCOや西武や、それにLOFT9なんかも登場させて、そういえば、ミルコクロコップも脳卒中をやったばかり。今ナウイし、高次脳機能障害はさらにナウイので、いい線いくかも。おしおし、新米障害者はがんばるぞー、オーエス!

付添人募集です。

進捗ナイト。ケロッピー前田さん絶好調。

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