ゴールデンスコア方式の延長戦に入った男子81キロ級決勝。互いに疲労の色が濃くなっていく中、永瀬は気持ちを切らさなかった。延長4分36秒、奥襟を取ってからの膝車で一本勝ち。「東京五輪への重要な大会。勝って、これからにつなげたい」。その一心で奪った鮮やかな一本だった。
右膝に大けがを負った2017年夏から、苦しい時を過ごした。手術を経て18年秋に戦列復帰したが、なかなか結果がついてこない。折れそうな心をつなぎとめたのは、銅メダルだった16年リオ五輪の悔しさだった。
「五輪の借りは五輪でしか返せない」。その舞台は20年東京。リベンジに挑戦できる可能性が残されている限り、諦めるわけにはいかなかった。
完全復活を懸けたこの日、最も力を発揮したのは準決勝だった。相手は昨年の世界選手権で準優勝した5歳年下の藤原(日体大)。この勢いのある20歳に主導権を渡さずに優勢勝ちすると、決勝も世界一を知る第一人者の意地を見せつけた。
ここ最近の成績から、夏の世界選手権代表には選ばれなかった。だが、その存在の大きさはアピールできた。「世界と戦うには内容はまだまだ。でも、勝てたことは自信になる」。強い永瀬が確実に戻ってきた。
この日の試合中、関係者以外からも、永瀬の名前を呼ぶ声は絶えなかった。長崎日大高時代の恩師、松本監督がうれしそうに言った。「みんな待っていてくれてるんだな」。東京への道が、はっきりと見えてきた。
男子81キロ級 永瀬 復活V 全日本選抜体重別柔道 東京につながる勝利
- Published
- 2019/04/08 11:05 (JST)
- Updated
- 2019/04/09 00:28 (JST)
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