【米朝会談取材の舞台裏】②「動く執務室」

中越国境・中国側

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北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長を乗せたとみられる専用列車=2月26日、中国・南寧

 応接室や寝室などを完備し、金正恩朝鮮労働党委員長の「動く執務室」とも言われる北朝鮮の特別列車。2月23日の平壌出発後、北京には寄らずに中国を南下し、4日目の26日早朝にベトナム国境の広西チワン族自治区憑祥市を通過した。中国国内だけで走行距離は三千数百キロ、要した時間は約60時間に及んだ。

 「突然道路が封鎖された。家に帰れない」。中国当局は警備のため、同じ区間の他の列車の運行を止め、沿線の道路も封鎖。特別列車は行く先々で庶民の生活を犠牲にしながら、平均時速約60キロで優雅な長旅を続けた。

 ドンドンドン。「公安だ」。憑祥市のホテルに先乗りし、深い眠りについていた25日午前2時(日本時間同3時)すぎ、しつこくドアをノックする音で起こされた。フロントからの電話も鳴り響く。ドアを開けると、当局者ら約10人が部屋になだれ込んできて身分証の提示を迫った。列車通過を前に「よそ者」に目を光らせているようだ。

 翌26日未明、線路周辺には警官が大量動員された。拘束を避けるため建物内から眺めていると、数両の列車が通過した。金氏の居室は防弾のスモークガラスとされるが、車窓からは明かりがこうこうと漏れている。

 「ひょっとしてこれが伝説のダミー列車かも」。金氏の父、故金正日総書記の訪中の際にも存在はささやかれていたが、実際に見たことはない。はやる心を抑えて待つこと約30分。約20両の特別列車が悠然と姿を現し、ベトナム方面へと走り去った。(憑祥共同=花田仁美)=続く