「生産緑地」高まる導入論 都市部の農地、30年管理で税優遇

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都市で農業を続ける意義について、農家が広島市や国の担当者に訴えた勉強会(3月11日、広島市中区)

 都市部の農地を守る生産緑地制度の議論が広島市で熱を帯びてきた。これまで農家の要望が小さかったことなどから中国地方の自治体は導入してこなかったが、都市農業を維持し豪雨時の被害を減らそうと、若手農家の中に導入を求める動きが出てきた。国も農地の防災機能を見直して規制を緩めている。広島市が先陣を切るか注目される。

 「固定資産税がネックで後継者が出てこない。農業を続けるために、生産緑地に指定してほしい」。3月中旬、安佐南区の若手農家たちでつくる川内若農家会などが開いた生産緑地の勉強会。メンバーの高西雅博さん(32)が、市の担当者に訴えた。

 高西さんたちが強調したのは都市農業の公益性だ。「2014年8月の豪雨で土砂崩れを防いだ」「広島菜など在来野菜の伝統を守っている」「子どもが農業を体験できる」―。市都市計画課の黒瀬比呂志課長は「農と共生した街づくりに生産緑地が有効か研究を進めたい」と応じた。

 生産緑地には追い風が吹く。高度成長期とバブル期に市街地の多くの農地が宅地になったが、人口減少で勢いは弱まった。相次ぐ自然災害で農地は雨水を蓄える機能や避難場所の役割が注目されている。農業体験や交流の場にもなる。15年に都市農業振興基本法が成立し「宅地化すべきもの」だった都市農地は「あるべきもの」に転換した。

 国は生産緑地の制度も見直した。500平方メートルとしていた面積の下限を、条例で300平方メートルまで引き下げられるようにした。ビニールハウスなど農業用に限っていた建築規制も緩め、農産物の加工施設やレストランの建設も可能にした。生産緑地を貸し借りしやすくする新法も定めた。

 しかし地方への広がりは鈍い。国土交通省によると生産緑地を指定しているのは17年末時点で232市区町村。東京都、大阪府、愛知県を中心とする三大都市圏の特定市が大半で、他の地域は10市町村にとどまる。農水省は「三大都市圏ほど税負担が重くない地方には、メリットが浸透していない」とみる。

 広島市は導入を見送ってきた理由の一つに農家のニーズの低さを挙げる。市街化区域の農家への10年の調査で「(生産緑地制度があった場合に)申請する」としたのは1384戸のうち6.4%。「30年間の営農義務が長い」などの意見があった。

 広島市都市計画課は「災害時の避難場所として使うことや、就農支援策と組み合わせるなど、総合的にどう活用できるか仕組みを検討したい」としている。