口腔がん 検診低迷 県内専門医「関心持って」

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 タレントの堀ちえみさんが公表した舌がんを含む口腔がんの検診が、県内で相次ぎ導入されている。富山市医師会健康管理センター(同市経堂)は2017年に県内の健診機関として初めて導入。富山市と同市歯科医師会は、18年度から節目年齢の口腔がん検診を始めた。ただ受診者はまだ少なく、専門医は「早期発見のため、自分の口の中に関心を持って」と呼び掛ける。(社会部次長・室利枝) 口腔がんは約6割を占める舌がんのほか、歯肉がん、口腔底がんなどがある。口腔がん撲滅委員会(東京)によると、16年に国内で口腔がん(咽頭がんを含む)にかかった人は2万1700人、死亡数は7675人で、死亡率は35・4%に上る。定期検診が普及している米国は19・8%と、日本の約半分という。

 富山市医師会健康管理センターは17年7月に検診を始めた。受診者は17年度が188人、18年度は245人で、このうち1人に早期がんが見つかった。ただ、受診者は施設の年間の健診利用者約3万人の1%にも満たず、堀さんの舌がん公表後もわずかに増えた程度という。

 検診を担当する早津良和・元富山赤十字病院歯科口腔外科部長は「口の中にがんができること自体あまり知られていない上、検診も定着していない」と指摘。全てのがんのうち口腔は約2%と希少なこともあり、過去にも故花田満さん(二子山親方)や甘利明元経済再生担当相が口腔がんを公表したが、関心は一過性だったという。

 富山市と同市歯科医師会は、40、50、60、70歳の国保被保険者らを対象に行っている歯周疾患検診に、18年度から口腔がん検診も組み込んだ。対象者に受診券を送り、市内の歯科医院で受けてもらう。同市の胃や肺などのがん検診受診率はおおむね20%台なのに対し、歯周疾患検診は例年2~3%。18年度は集計中だが、同市保健所は受診率は大きくは伸びていないとみる。

 口腔がんは早期ならば部分切除などで治すことができるが、進行すると体の他の皮膚を移植・再建するなど大きな手術が必要になる。食べる、話すなどの機能や外見も損なわれ、術後の生活への影響も大きいとされる。

 早期発見を呼び掛けるため、県歯科医師会も啓発に乗り出した。口腔がんの症状のチェックリストなどを掲載したリーフレットやポスターを作成。2月から県内の歯科医院で配布・掲示を始めた。

 富山大大学院医学薬学研究部歯科口腔外科の野口誠教授によると、口腔がんは初期のうちは痛みなどの自覚症状がない上、症状が出てからも口内炎や歯肉炎と勘違いしたまま進行してしまうことが多い。「内臓と違い、自分で見つけられるがん。定期的に検診を受けるとともに、日頃から口の中に関心を持ち、おかしいと思ったら受診することが大切だ」と話している。

 ■15分隅々チェック 記者も体験 歯科・口腔がん検診はどんなものか。富山市医師会健康管理センターで、記者も受診してみた。

 まずは問診票の記入。口内炎ができやすい、舌の色が気になるなどの項目から、当てはまる症状を選び、喫煙や飲酒の習慣も記入する。次はパノラマエックス線検査。歯や上下の顎を含めた口腔全体を撮影できる装置という。

 問診と視触診は、同市歯科医師会から派遣された歯科口腔外科の専門医が担当。歯茎や粘膜の状態を見るほか、ゴム手袋を着けた指で舌の側面にしこりなどがないか調べる。歯周病の有無もチェックし、検査は終了した。

 引き続き、エックス線画像を見ながら説明を受けた。記者は親知らずの抜歯を勧められたが、がんについては「異常なし」。問診から説明までじっくり15分間。自分の口の健康に関心を持つ貴重な機会となった。

 検査はドック健診のオプションで、費用は6400円。担当者は「健康診断のついでに、受診してもらえれば」としている。