【米朝会談取材の舞台裏】③変身

中越国境・ベトナム側

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2月22日のドンダン駅(上)と3月2日の同駅=ベトナム北部ランソン省

 山あいの駅で、思わずつぶやいた。「本当に来るの?ここに?」。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長のことだ。米朝首脳会談の開催地ベトナムに列車で入り、北部ランソン省のドンダン駅で車に乗り換えると言われていた。でも―。到着4日前の2月22日、下見を兼ねて訪れてみると、駅正面の大時計は止まり、あたりは森閑としていた。

 この時は金氏が列車で平壌を出発したとの報道が出る前。列車説はダミーで、飛行機を使うという観測もまだあった。半信半疑で取材を始めたが、徐々に緊張感の高まりを感じ取れた。警官は駅の屋根まで上って周囲を確認していた。構内にカメラを向ける記者を制する治安当局者もいた。

 駅前には重機やトラックが次々に到着。工事業者がセメントを流し込み、整備を始めた。廃材を集めていた業者に尋ねると「何のためかは聞かされていないが、今日中に終えなければいけない」。気持ちが変わった。「やっぱり来るかも」

2月22日のドンダン駅(左)と3月2日の同駅=ベトナム北部ランソン省

 金氏の到着前日の25日に再訪すると、国境の駅は一変していた。ベトナム国旗と同じ赤と黄色の花で彩られ、構内には赤じゅうたんや人工芝。ベトナムと北朝鮮の大きな国旗も掲揚された。海外メディアの記者も「まるでテーマパークだ」とその変身ぶりに驚いた様子だった。

 到着は26日午前中と目されていたが、前夜には100人を超えるメディアが集結し脚立を設置。霧雨で冷え込む中、少しでも良いアングルで金氏の姿を捉えようと、多くの記者が夜を徹して待ち続けていた。(ドンダン共同=日出間翔平)=続く

2月22日のドンダン駅のホーム(上)と3月2日の同駅=ベトナム北部ランソン省