第2打席は「音」について、川崎と古市が熱く談義
野球と音楽という2つのジャンルを融合させる、おなじみのラジオ番組、Full-Countプレゼンツ「NO BASEBALL, NO LIFE.」。今回は「野球と音楽・特別対談」と題し、1990年代にヤクルトスワローズで活躍した右腕・川崎憲次郎、そして知る人ぞ知る筋金入りのヤクルトファンでもあるモッズバンド「THE COLLECTORS」の古市コータローが奇跡の対談を果たした。
30年以上もヤクルトを応援し続ける古市の思い出話の数々に、当事者だった川崎は大興奮。出会った途端に意気投合した2人に加え、進行役として「SCOOBIE DO」のオカモト”MOBY”タクヤも参加。野球界と音楽界に数多くの共通項が見つかるなど、およそ90分にも及ぶ対談の真剣勝負・全3打席から、今回は第2打席をお届けする。
【第2打席 キャッチャーとドラマーと音】
古市「昔、松井秀喜の初ホームランを見たんですよ」
川崎「高津さんから打ったやつですね?」
古市「そうそう、あれって(打つか)試したんでしょ?」
川崎「そうですね。まだ松井君がどの球を打つか分からなかったので、試しに投げでみたら本当に打たれちゃったって。高津さんはそう言ってました。言い訳かもしれませんが(笑)」
一同(笑)
川崎「でも、試してみないと分からないんですよ。まず打たせてみて相手の得意なコースを知る。これが一番です」
古市「奥が深いねえ」
MOBY「川崎さん、92年、93年のチームメートってみんな仲が良かったんですか?」
川崎「とても良かったですよ。皆さんご存知の通り、ヤクルトの選手って当時はものすごく個性が強かったんですけど、誰と誰が仲が悪いとかそういうのはなかったですね」
MOBY「飲みにいったりするのもそうでした?」
川崎「基本は投手は投手で固まるんですよ。その方がピッチングの話ができますからね。あとはちょっと愚痴も言えて。野手と行くとお互い表には出しませんが、気を遣う部分もありますし(笑)。だから、シーズン中に投手と野手がご飯に行くのって、実はあんまりないパターンなんです」
川崎憲次郎「野球以外の方とお話しをすることで、いろんな刺激をもらいたい」
古市「バンドで言ったらドラマーと似てますね。ドラマーってドラマー同士で集まる習性があるんですよ」
川崎「へえ、そうなんですか?」
MOBY「そうなんです。対バンとかフェスとかあると、なぜかドラマー同士で集まって飲むんですよ。あとベーシストも固まりがちだし。ボーカリストはまず来ない」
川崎「えっ、それはなぜですか?」
古市「ボーカルは常にここ(喉)を気にするんですよ。声が出なくなると怖いから、そういう場所に顔出さないんですよ」
MOBY「お酒に強い人たちはまったく気にせず、朝までコースの方もいますけど」
古市「我々の年齢になるともう来ないですよね」
川崎「なるほど、本業が大事ですからね。じゃあギターは?」
古市「ギターは、もう自由に来ます。でも、僕はあんまり飲み会で音楽の話はしたくないんですよ。たまに若手のギタリストが来て『どういう機材を使ってるんですか?』とか質問してくるんだけど、『そんな話いいから飲もうよ』って(笑)」
川崎「野球選手と飲むと、やっぱり野球の話ばっかりになっちゃうんですよ。音楽も同じなんですね。決して悪いわけじゃないですけど、野球以外の方とお話しをすることで、いろんな刺激をもらいたいというのは常にあります。それこそ今回のような機会は、僕にとっては初めてなのでとても新鮮ですよ。これほど野球好きのミュージシャンの方が多いって印象が今までなかったんです」
古市「結構みんな好きですよ」
MOBY「松坂世代のミュージシャンは結構野球好きが多いですよ」
川崎「松坂くんは今年で……」
MOBY「39歳ですね」
川崎「もう39ですか、早いなぁ。そりゃ俺たちも歳とります(笑)」
MOBY「松坂世代でも、すでに引退してコーチになっている人もいますね」
古市「それいいよね。俺もバンド界のコーチになりたいよ(笑)」
古市コータロー「バンドで言ったらドラムがキャッチャーだね」
川崎「ドラムの話になったのでお聞きしたいんですが、楽器はやっぱり演奏する人によって音が変わるんですか?」
古市「全然違いますね。それぞれの特徴が出るんですよ」
MOBY「同じ楽器を使ったとしても全然音が変わりますから」
川崎「へえ、そうなんですか。じゃあ同じエレキギターを使っても?」
古市「もう全然違います。極端に言うと、何を弾いても自分の音になるんです。それはある程度のスキルの人と、それ以上のスキルを持つ人の違いですけど。野球だと他人のグローブを借りたとしても、変わらずに自分のプレーができるとか」
川崎「なるほど、でもそれくらい音に違いってあるんですね」
古市「そうですね。だって面白いと思うのは、自分がエレキギターを録音したCDを家でかけながら、弾き方を忘れちゃったからコピーしようと生音で演奏するでしょ。そしたら、生音でもCDと同じ音がしますから。タイム感とか力の配分とか、何かあるでしょうね」
MOBY「野球だと、例えばキャッチャーが違うと感覚が全然違うとかありますか?」
川崎「古田さんは、何と言っても投げやすいキャッチャーでした。バント処理だったり、盗塁阻止だったり、配球だったり、先読みだったり、いろんな処理ができて、ものすごい安定感がありました。ピッチャーが投げやすいキャッチャーっていうのは、構え、座った時の形だったり、あと配球ってよく言われますが、それだけじゃないんですよ。配球が成功するかどうかは結果論で、投げる前に当たりか外れか分からない。成功すればいいですけど、失敗した時、お互いがその場で『ごめん』と言えるような納得のいくボールが投げさせられるか、というところですよね。バンドマンでも同じようなことがありませんか?」
古市「バンドで言ったらドラムがキャッチャーだね」
MOBY「そうですね。ミスしたら一番目立つのがドラムですよね。全部止まっちゃうんで。他の人がミスしても楽屋に下がった時に『ミスしちゃった』で終わりますが、ドラムがミスしたら『お前どうしたの?』って責められますからね」
古市「(MOBYを見ながら)ありえないからね。ドラムのミスっていうのは」
一同(笑)
MOBY「ドラムはいいプレイも大事ですが、ミスをせずにプレイするのが一番大切で。レコーディングもノーミスで演奏できた時の方が良かったりする。それを超えられるかどうかが、上手い人とそうじゃない人の差だと思います」
川崎「じゃあ、MOBYさんは一番大事なポジションにいるということじゃないですか。……大変ですね」
ブルペンの音と球場の鳴り、楽器の音とライブハウスの鳴り
MOBY「音楽つながりの話だと、昔、大滝詠一さんが、バットの素振りの音をサンプリングして、リズムを作ったりしてました」
川崎「へえ、野球がおしゃれな曲の音になるなんてびっくりですね」
MOBY「ボールがバットに当たる音とか、ボールがキャッチャーのミットに収まる音とか。でも、ブルペンキャッチャーが球を取る音ってめちゃめちゃいい音しますよね」
川崎「ブルペンキャッチャーの音でいうと、天才的な人は間違いなく音が鳴るところで捕りますから、スパッていい音が鳴りますね。ちょっと話は変わりますが、ストレートを投げて自分で完璧だと思っても、ミットがスパッていい音が鳴る時と、そうじゃない詰まったようなパサッていう音の時があるんですよ。これはキャッチャーが悪いわけじゃなくて、こっちの責任なんです」
古市「へえー」
川崎「実はそれが投手の1つのバロメーターになるんです。キャッチャーは絶対音を鳴らそうと構えているので、パサッて音がしたってことは、こちらが投げた球が変化してるか、調子が悪いか、どちらかなんですよ。キャッチャーのミスってそんなにないので」
古市「なるほど。球場によって鳴りの違いはありました?」
川崎「ありました。昔の広島市民球場のブルペンは、ものすごく音が良かったです。反対に、何かこもったような音、全く響かない球場もありますよ。そんな時はアレッてなりますよね。最近は消音の球場もあるので、ブルペンで投げる音が全部パサッパサッてなってしまう。全然音が鳴らなくて、調子悪いんじゃないかって思う時もありましたね」
古市「それ、最近のライブハウスですね。最近のライブハウスって消音消音で、なにこれ?ってなるけど、野球もそうなんだ! やっぱりライブだよね。俺たち、音の鳴りが悪いところは“デッド”って言うんだけど、そういう場所で弾くとギター下手になっちゃったのかなって思いますし、客席の歓声が上がってるんだけれど、聴こえてこないから『あれ? 俺たち人気ねえなー』って(笑)」
MOBY「反対にあまりに良く鳴り過ぎて、酔いしれてしまって、プレイ的に良くないこともありますね(笑)」
古市「あるよね」
川崎「音響って大事ですね」
古市「大事大事」
(第3打席に続く)
■川崎憲次郎 情報
GAORAでも放送中のCTS ケーブルテレビ佐伯の番組「川崎漁業組合」
元プロ野球選手・川崎憲次郎が故郷の大分県佐伯市で釣竿片手にあらゆる釣りの醍醐味を紹介する。大分弁を流暢に話す川崎が、自然に恵まれた大分の魅力を郷土愛たっぷりに伝える。
■古市コータロー 情報
4thソロ・アルバム
『東京』
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ライブ情報
古市コータロー SOLO BAND TOUR “東京”
5/30(木)梅田CLUB QUATTRO
6/01(土)広島・CAVE-BE 開演
6/08(土)東京キネマ倶楽部
6/09(日)東京キネマ倶楽部
6/15(土)仙台・LIVE HOUSE enn 2nd(福嶋剛 / Tsuyoshi Fukushima)