桜川・磯部地区 ヤマザクラの「聖地」発信 無料ガイド、来訪者と交流

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観光客に「桜川のサクラ」を案内する橋本慶晴さん(左から3人目)=桜川市磯部

古くからヤマザクラの名所として知られる桜川市。同市磯部の櫻(さくら)川磯部稲村神社(磯部亮宮司)と磯部桜川公園は、国の名勝に指定されているとともに、天然記念物の桜がある「ヤマザクラの聖地」だ。桜が見頃を迎えた今の時期は「サクラサク里プロジェクト」のメンバーが、境内で桜ガイドとして活躍。ヤマザクラの魅力を発信しようと、来訪者と交流を深めている。

「匂いをかいでみて。ほんのり香るでしょう。本物の桜の匂いだよ」。同プロジェクトの名前が入った紺色のジャンパーを着た橋本慶晴さん(54)が説明する。

同プロジェクトは、10年以上前から、境内に常駐し来訪者向けに無料で桜ガイドを担当。ヤマザクラの魅力を伝えようと、一本ごとに異なる花の特徴や地域の歴史などを解説している。

2005年、当時の岩瀬商工会青年部を中心に発足。貴重な桜を守り育てようと、同神社の磯部宮司とともに地道な活動を続けている。メンバーは期間中は本業をやりくりしながら、手弁当でガイドを買って出る。活動の根底にあるのは、メンバーの熱意だ。

平安時代の歌人、紀貫之(きのつらゆき)は同所の桜を歌に詠んだ。室町時代は世阿弥作「謡曲 桜川」の舞台にもなった。それらの歴史を踏まえ、橋本さんは「ここはヤマザクラの『聖地』。貴重なヤマザクラを後世に伝えていかなければならない」と強調する。

一緒に境内にある天然記念物の桜を回り、一つ一つの花に目を凝らしたり、匂いを楽しむ。天然記念物「桜川のサクラ」は、11種が品種指定されている。解説を聞きながら意識して見ると「初重(はつがさね)櫻」「初見(はつみ)櫻」など、特徴に合わせて名前が付けられていることも分かる。ヤマザクラは花とともに、赤芽や黄芽などの葉芽が開くのも特徴的。橋本さんは「だからガイドが必要。私たちは花見ではなく、『観桜』と呼んでいる」と強調する。

さいたま市から家族で訪れた新井博さん(75)は「桜川市に国の名勝があると知り来た。桜と言えばソメイヨシノだったので、説明を聞いて桜に対する見方が変わった。来て良かった」と満足げに話した。

この時期は、桜ガイドとともに、同プロジェクトがホームページで発信する開花情報も定評がある。代表の渡辺雄司さん(54)が3月下旬から毎日、日の出前から同神社と同公園、高峯を歩き、目視で開花の状況を確認。その地道な試みは大きな信頼を集める。

境内や周辺の里山では、ヤマザクラが見頃を迎えている。橋本さんは「一本一本の違いを理解してもらうと、花見の仕方が変わる。遠慮なく声を掛けてほしい」と話している。(平野有紀)