BMW 新型Z4 M40i試乗|その走りはチャラくない。BMWの基本を備えた優れたスポーツカー

BMW 新型Z4 M40i 走り

果たしてスープラの面影はそこにあるのか?

日本在住のクルマ愛好家であれば、おそらくこのクルマの登場を色んな意味で待ちわびていたと思う。いや、世界中のクルマ好きが反応してるって言っても、決して過言ではないかな。

かくいう私もそうだもの。このクルマの試乗を編集部から持ちかけられたとき、一も二もなく「乗る!」って答えた。今、このクルマに乗っとかなきゃ、そう思ったから。

BMW 新型Z4だ。

そう、もう誰でも知っているからもはやオブラートに包んだりしないけど、このクルマはトヨタの新型スープラと共同開発をされた、兄弟車である。スープラの発売時期はまだ発表されていないが、Z4はひと足早く、2019年3月25日に発売がスタートしている。

そんななか今回試乗が叶ったのは、トップグレードのZ4 M40iだ。

3.0リッター直6ターボエンジンは350ps。500Nmを1,600rpm~4,500rpmで発生させる。同じアーキテクチャのスープラも、ボディーサイズ含めてほぼ同じなのだけど、Z4とスープラには大きな違いがある。

Z4はキャンバストップを備えた、オープンモデルであるということだ。

BMW 新型Z4 M40i 外装(エクステリア)
BMW 新型Z4 M40i 外装(エクステリア)
BMW 新型Z4 M40i 外装(エクステリア)
BMW 新型Z4 M40i 外装(エクステリア)
BMW 新型Z4 M40i 外装(エクステリア)
BMW 新型Z4 M40i 外装(エクステリア)

それによりZ4はスープラに比べてほんのわずか(+10mm)高く、オープンルーフの機構から、クーペのスープラよりも50kg重いのが特徴だ。

しかし、試乗してみるとそんな重量の差は大した問題じゃない。むしろBMWとしての基本性格をきちんと備えた、優れたスポーツカーだということを実感した。

BMW 新型Z4 M40i イメージ

現代のBMWデザインへと進化した内外装

まずはエクステリアだ。

初代、2代目からの進化は言わずもがなだが、他のBMWラインナップともまた大きく趣きを変えているのが面白い。昔からZ4はラインナップの中でも個性的なルックスをしていたけれど、ライト周りなんかは特にそう、小ぶりなユニットがボディーの両端に大胆に振り分けられて配置され、離れ目的な手法を採っている。キドニーグリルまではごくシンプルに作られているけど、ロワーグリルに空力を想わせる立体的なエアインテークを配置して視覚的にもボリュームを下に持ってきた。これにより、実寸以上のワイド&ロー感を備えている。

BMW 新型Z4 M40i 外装(エクステリア)
BMW 新型Z4 M40i ホイール
BMW 新型Z4 M40i 外装(エクステリア)
BMW 新型Z4 M40i

アイコンであるキドニーグリルもZ4なりの解釈がなされていて、いやはやほんとに個性的だ。リアはやや腰高だけど、肉厚感・ボリューム感は上手に抑えられていてスタイリッシュ。そう、全体的に抑揚を抑えた、かなりシンプルなライン構成で仕上げらているようなイメージである。

内装はいかにもBMW!な、シンプルで剛健なお馴染みのモノ。同社の横長タイプのナビを備えたモデルを一度でも経験した人なら、ゆきずりでも使いこなせること間違いなしだ。

2シーターだから、室内空間にはさほど余裕があるわけじゃない。両シートとも、ドライビングポジションを取ったらシートの後ろに荷物を入れる隙間すら見当たらないくらい。

BMW 新型Z4 M40i 内装(インテリア)
BMW 新型Z4 M40i 内装(シート)
BMW 新型Z4 M40i 内装
BMW 新型Z4 M40i 内装

センターコンソールにはグローブボックスほどの物入れがあるけれど、これも文字通りの小物入れに留まりそう。ラゲッジもちろん、ルーフの収納分小さくなっているので、そのへんは注意してほしい。

ただ、カップルディスタンスに窮屈感を感じることがないのは、シート自体の設計がサイドサポートのしっかり立ったスポーティーなものだからだ。パーソナルスペースをしっかりと確保してくれているのはさすが、ヨーロピアン・スポーツだ。

BMW 新型Z4 M40i 走り

オープンモデルを思わせないガッチリボディ

BMW 新型Z4 M40i 今井優杏

試乗してみる。

まず驚いたのが、圧倒的な静粛性だ。

何度もいうがZ4はキャンバストップのオープンモデルである。だからこそ、外からの音が入るのはある意味当然、くらいに思っていた。ハードトップのオープンモデルならばまだしも、キャンバストップならば室内と外界を隔てるのは布一枚だからして、ある程度隙間風も入りそうだし、素材的にも遮音や密閉は難しいだろうと思い込んでいたのだ。なんというか、ある種の割り切りが必要なクルマなんじゃないかな、と。

しかしこのキャンバストップは凄い。クローズド・ボディーに近いくらいの静粛性が保たれているのは空力設計のおかげなのだろうか。高速道路走行中もザー、とか、シューとかいう風切り音がほぼ入ってこないのに驚いてしまった。

BMW 新型Z4 M40i 外装(エクステリア)

そして、オープンモデルなのに、といえばもう一つ驚くのは、弩級のボディー剛性!これ本当に屋根開くんですか?と確かめちゃうくらいにしっかりカッチリしている。

それを実感するのが、コンビニなどから一般道に出るときなんかの、大きめのギャップを乗り越えたとき。ボディーがねじれる感じがなく、まるでジャンプから降り立ったアメリカン・コミックスのヒーローみたいに、シュタっ!と華麗に着地するのだ。

もちろん、道路の継ぎ目なんかの小さな入力が連続するようなシーンでも効果てきめん。ただ硬い、だけではなく巧く振動を逃しているのだろう、ねじれ感のなさは本当にお見事だ。

もちろん、ルーフをオープンにしたって印象は変わらなかった。

BMW 新型Z4 M40i エンブレム

サスペンションは“M”の名を冠するワリには柔らかい。しかし、このサスペンションセッティングこそが(プロトタイプではあるが)スープラとの最も大きな違いであると感じた。スープラのほうがもうすこし全体的にマイルドなのだ。本当に藤原豆腐店のハチロクじゃないけど、紙コップの水をなるべくこぼさせないような、ロールをじわ〜っと活かして前後左右の挙動を繋げさせるように仕立てられている。

BMW 新型Z4 M40i 走り

初代から継承されているZ4らしさとBMWらしさ

対してZ4はやっぱり、どこかこの先、延長上にM2が存在するのを自然と思わせるような、タイトなコーナリングを見据えたような締め気味のセットだ。

一般道ではさらにその印象が顕著で、先述の剛性感と相まって「ああ、スポーツカーだなぁ」とその締まったアシを、小さな段差ひとつ越えるたびに実感するほど。

BMW 新型Z4 M40i 走り

文頭の“M”のワリには柔らかい、というのは、この「M40i」シリーズがほかの車種に展開されているものも含めて”Mパフォーマンス“という、Mの良さを日常的に味わえるようなポジショニングに位置づけられているから。

つまり、車内でホットコーヒーが飲めないほどにガッチガチではない。だけど、程よく締まって心地よくスポーティー。大きなRのカーブを曲がるときなんて、絶妙に操舵がキマるから、きっと爽快感を味わえるに違いない。スープラの3・0リッター直6ターボは直線番長かな、と思ったけれど、Z4のそれはむしろ、峠なんかでキャラが生きそうな気がした。ブレーキも立派なモノが入っているし!(ただしこのブレーキ、日常ではちょっとオーバースペックかも。かなりのフェザータッチで踏まないと、いきなりギュッと急激に効いてしまうから)

BMW 新型Z4 M40i エンジン

肝心の直6ターボエンジンの爽快感は言わずもがな。乗るたびに心動かされるのは、アクセルペダルの踏力に対し、打てば響くように反応するレスポンスの良さだ。Z4はボディーが小さい分(ほんとうにショートホイールベースのその姿は、思った以上に小柄!)、このエンジンのパワーを存分に享受できることこそ醍醐味だろう。1600rpmと低いところからトルクが生まれるから、一般道でも充分に直6ターボを楽しんで貰えると想う。

なにより、刷新されても新型もやっぱりZ4だったというか、きっちり初代からの性格をフィーリングとしてきちんと継承している、味として残している、というのが、BMWらしさだと感じた。

[執筆:今井 優杏/写真:佐藤正巳]

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