独特のセンスとひらめきで人気を博し、日本のお笑い界で引っ張りだこの、お笑いコンビ「野性爆弾」のくっきーさん。実はアーティストとしても活動しており、今回、ニューヨークで4日間開催される「アートエキスポNY」で初の作品出展が決定した。そんなくっきーさんに、アートへかける思いと作品の世界観、そしてエキスポへの意気込みを聞いた。
独特の感性と着眼点で練られたネタを披露し、観客を笑いに導く、お笑いコンビ「野性爆弾」のくっきーさん。まさに爆弾のようなスリルと威力を持つ自身の芸風を、くっきーさんは「蟲(ムシ)と同等の人間の、憎悪と憧れの言霊」だと語る。
2010年代から徐々にブレイクし、昨年のCM契約本数は10本、出演したテレビ番組本数は300本を超えた。今や、メディアで見掛けない日はないほどの人気者だ。
そんな彼が、昔からずっと絵画制作を続けていることは、あまり知られていないかもしれない。
「小さいころから絵を描くのは大好きでした」とくっきーさん。「兄が絵上手で、自分も負けじと絵を描いていたんです」。
画家名は「肉糞太郎」。大胆な響きを持つ「肉糞(ぐそ)」とは、肉体を作るために食べ、出した排せつ物が土に帰って生命を生み出すという、「自然の摂理を含んだ『人間』」を表した言葉なのだとか。
我流で描く「バケモノ」
制作で使うのは、アクリル絵の具と油性マジック。技法を学んだ画家も、感化された作品も「特にない」そうで、くっきーさんは文字通り、我流で作品を作り続けてきた。
今回、ニューヨークで展示するのは、「肉糞乙女」という絵画シリーズ。どこかくっきーさんに似た、眼力のある男性が、可憐(かれん)なバラに囲まれているという、どこかアンバランスで不思議な魅力を持った作品だ。
今作のアーティストステートメントで、くっきーさんは、「私は『バケモノ』の代表」とつづっている。
「私のような容姿でも、生きている限り『KAWAII』を装って生きる権利がある。誰にでもある『OTOME』な部分を、表に出せない人たちへのための作品」
今回ジャピオンがその真意を探ろうと問い掛けたが、くっきーさんは「考えないで、感じないで。アートなんてそれでいい」と、力強く語った。
世界の大舞台で勝負
ニューヨークでの展示場所は、「アートエキスポ・ニューヨーク」。今年で開催41年目を迎える伝統ある美術展覧会で、世界中から400人以上のアーティスト、1000人以上の業界関係者が参加。国際レベルの現代アートが一堂に会する、大規模なイベントだ。アーティストの国際的な活躍を支援する、一般社団法人アートレイツからのオファーで、くっきーさんの参加が決まったという。
くっきーさんは今回の出展を、「私が上がっていくための階段の一部」と語った。
「アートエキスポは30段飛ばしほどの、人生で最も偉大なもの(階段)となろう、です」
では、その先のゴールは? くっきーさんは、「ないです」ときっぱり。
「ずずずいずい、と進み続けるのみ。あえていうなら、『死した時、我完成したり』です」
ニューヨークでの野望
くっきーさんが「生きている街」と表現する、ニューヨーク。滞在中の予定に関しては、「ハンバーガーが好きなんだ、腹いっぱい食べたいんだ! ポテトとコーラもいただきます!」と、にっこり。
「芸人としても、いつかアメリカ進出、いいですね。もしニューヨークでやるなら、日本の伝統、水芸を披露したいです」
どこまでも不思議なこのテンションと感性が、お笑いでも、アートでも、人々の心をつかんで離さない。