<隠れた名盤> 平山みき『鬼ヶ島』 歌声のチカラに唸らされる

平山みき『鬼ヶ島』

 82年当時、レコードで発売されたオリジナル。これまで1度もTOP100に入っていないが、これで4度目となるCD化は、熱量の高いファンに愛されてきた名盤の証だろう。

 全10曲、近田春夫がプロデュースを手掛けており、彼が率先して日本に広めてきたテクノポップスに、更にレゲエも融合させた当時も今も類を見ないサウンド。友人の兄との密会を歌った『ひろ子さん』や、弟の大学入試をテーマにした『よくあるはなし』、日曜の昼下がりを描いた『電子レンジ』など、歌詞もかなりユニークで、『真夏の出来事』など彼女のヒット歌謡との優劣は単純に比較できない。おそらくそれこそが近田の狙いだったのだろう。

 しかし、何度か聴いていると、アクの強い平山の声で、それぞれの歌の登場人物が具現化してくるから不思議! 小悪魔的に色っぽく、弟思いで世話好きで、でも休日は独りでまどろんでいる女性が浮かんでくる。そして、タイトル曲の『鬼ヶ島』では、さながらジャングルで闘う女ターザンのよう。あらためて歌声のチカラに唸らされた。

 本作を聴けば、人それぞれの持ち味がどう作用しているのかをより強く意識するようになるはず。

(ビクター・2315円+税)=臼井孝

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