<大ヒット盤> Aimer『Penny Rain』 心の奥底に問いかける歌声

Aimer『Penny Rain』

 多くの作詞も手掛ける女性ボーカリストの2枚同時発売となるオリジナル5thアルバム。もう一方の『Sun Dance』は、晴れやかなダンスポップや軽快なギターロックなど明るい楽曲が多いが、本作の方は、総じて心の奥底に問いかけるような作品となっている。

 全10曲中、Cocco『Raining』のように過去を想起する『April Showers』や、そのCoccoからの提供作『眩いばかり』など、一見穏やかに聞こえる(とはいえ内心は喪失感に満ちている)優しいバラードもあるが、多くの楽曲はヒリヒリと感じる人も多いのでは。

 特に、梶浦由記が詞曲を手がけた『I beg you』と『花の唄』は、どちらも相手への愛に満ちているのに、Aimerの淋し気なハスキーな歌声だからこそ、やがて悲しみが訪れそうな状況が胸に迫る。また、「愛されるような 誰かになりたかっただけ」と、もがくように歌うハードロック調の『Black Bird』では、妬みや自虐など青春期の裏側まで描かれている。こうした作品がチャートの上位になるとは、本音や本物が支持される時代なんだとあらためて感心した。

 本作を何度も聴けば、言葉にできない想いを抱く人にもそっと寄り添うことができるはず。

(ソニー・通常盤2000円+税)=臼井孝

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