日産の臨時株主総会 「叱咤激励」のなか、経営陣は?

©株式会社ニッポン放送

「報道部畑中デスクの独り言」(第123回)では、ニッポン放送報道部畑中デスクが、4月8日に行われた日産の臨時株主総会について解説する。

日産の臨時株主総会には多くの株主が駆け付けた(4月8日撮影)

カルロス・ゴーン前会長の逮捕から4ヵ月あまり、舞台となった日産自動車周辺は相変わらず慌ただしい動きです。ゴーン前会長は記者会見の予定が伝えられてまもなく4回目の逮捕、今週は逮捕前の動画が報道陣に公開されました。一方、日産では先月、ガバナンス改善特別委員会の最終報告、久々の新型車発表、そして今週は臨時株主総会が開かれました。

東京・高輪のホテルで開かれた臨時株主総会、当日の出席株主は1,832名(日産発表)。会場のある建物の周囲は朝かららせん状の列ができていました。
臨時株主総会の議題は3つ。これまで取締役会で決議されていたカルロス・ゴーン、グレッグ・ケリーの両取締役の解任と、ルノーのジャンドミニク・スナール会長を新たな取締役に選任する決議です。承認されれば、名実ともに日産は「ゴーン体制」から決別することになります。

「株主の皆様にはこのたびの一件、大変なご心配とご迷惑をおかけしましたこと、大変申し訳なく思っています。深く深くおわびを申し上げたいと思います」

午前10時に始まった株主総会。冒頭、定款などの説明の後、日産の西川廣人社長ら経営陣が頭を下げました。一連の事件に関し、西川社長は記者会見で謝罪をする場面はあったものの、このように役員を含めて深々と頭を下げたのは初めてではないかと思います。総会はインターネットを通じて中継されました。

株主総会のもようはインターネットでも中継された(YouTube「日産公式チャンネル」から)

「(ゴーン、ケリー両被告の)2人だけで今回の件になったことはあり得ない。日産の再生で約2万人の仲間たちが切られたと思う。その顔が浮かぶのか。現経営陣が責任を取って総退陣し、刷新を行うべきだ!」

質問ではこんな厳しい声もあがりました。西川社長は「提案」でなく「意見」であることを確認した上で、「日産のいまと将来の責任を果たすために全社を挙げて当たっている。20年にわたるひずみは大きく、まだまだ道半ば」として、早期辞任を否定しました。そして「次のステップに行けるというところまで行って、自らの処し方をお諮りしたい」と述べました。

一方で、株主からは「西川さん、よく戦ってくれた。あなたがいたからできたんですよ」という発言も。西川社長が神妙ななかに困惑した表情を浮かべたのが印象的でした。西川社長は「何も言葉はございません。大変ストレートなご意見ありがとうございました」と答え、場内から笑いが起きる一幕もありました。

ゴーン前会長が社長だった時代の「ナンバー2」、志賀俊之取締役も口を開きました。
「(ゴーン前会長逮捕の)ニュースを知って驚愕、自分なりに理解するのに時間がかかった。詳細を聞くにつれ、どうして止められなかったのかと反省。いまも心が痛む日々を送っている」

これを受けて西川社長は「最初のころから(ゴーン前会長と)一緒に仕事をして来た志賀さんとして、よりショックが大きかっただろうし、より制御することが難しかったのではないかと思う」と話しました。実は志賀氏と西川氏、「犬猿の仲」と言われるのですが、認識の違いを感じる場面でもありました。

横浜市内のホテルで行われたガバナンス改善特別委員会の記者会見(3月27日撮影)

「時間の関係」で質問は途中で打ち切りとなりましたが、3つの議案は罵声が飛ぶこともなく、拍手をもって承認となりました。時間にして2時間57分の長丁場でした。

先日の三社連合の「アライアンスオペレーティングボード」と合わせ、日産の「肝」ができあがり、今後は「肉付け」、ガバナンス改善特別委員会での最終報告…6月末の指名委員会等設置会社への移行、拡充する社外取締役の人選、会長職の廃止などを受けて具体策の作成を急ぐことになります。

私が知りたかったのは西川社長ら経営陣の発言もさることながら、一連の事件を株主がどう感じているかということでした。ホテル内に設けられたモニタールームで株主総会の様子を見ていましたが、そこから感じる雰囲気はいわば「叱咤激励の会」。前述のような厳しい声もありましたが、荒れることはなく、株主からは日産に対する深い知識と思い入れ、温かささえ感じられました。

株主に話を聞くと、ゴーン被告の裁判の行方についてはあまり関心がなく、今後の日産に対する意見が目立ちました。

「経営陣がしっかり立て直して手腕を見せてほしい」
「ゴーン前会長が日産の立て直しに重要な役割を果たしたことは間違いない」
「取締役がきちんとしたけじめをつけていない。株主を続けるかどうかは厳しい。西川さんは下の人に任せた方がいい」
「(今回の事件は)あまりにも大きな傷だ。国際的な事件がからんでいるので日本人だけでは解決できない。スナール氏に期待」
「スピードの進化に取り遅れるのではないか」…今後を不安視する声もありました。

「日産には日本の企業であってほしい」
「“技術の日産”の原点に戻ってほしい」
「輝いていた時代がよみがえってほしい」…日産の復活を望む声も根強くあります。

記者会見する西岡清一郎(左)、榊原定征(右)両ガバナンス委員会共同委員長

一方、驚いたのは話を聞いた株主のなかで、日産車に乗っている人が1人もいなかったことです。以前乗っていたものの「見放した」という人もいました。単なる偶然だと思いますし、そう願いたいところです。

「昔のスカイラインのようなユニークなクルマを」
「GT-Rはバカ高い。普通の庶民が乗れるクルマでワクワクするようなクルマを」
「日産の役員・社員に言いたい。“自分が買いたいクルマがいま日産にあるのか”」

国内市場は「℮-POWER(イーパワー)」と呼ばれる電動化技術を中心に「ノート」や「セレナ」は好調な販売を続けますが、売れ筋はこのような一部に限られ、全体的には長らく低迷が指摘されています。西川社長は「電動化・自動運転技術を武器にして積極的に商品投入する。ニッサン・インテリジェント・モビリティは『技術の日産』の現代版」と、今後の巻き返しに意欲を見せますが、このような株主の声が日産の現経営陣には響いているでしょうか。(了)