社説:CO2対策提言 本気度疑う削減先送り

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 今できることを総動員すべきだ。

 日本の長期的な温暖化対策の戦略策定に向け、政府の有識者会議が提言をまとめた。

 地球温暖化防止のためのパリ協定は各国に長期戦略の策定を求めている。政府は提言を踏まえ新たな温暖化対策や目標をまとめる。

 提言は、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出が実質的にゼロの「脱炭素社会」を目指すとしている。

 パリ協定は「世界の平均気温上昇を1.5度に抑えるよう努力する」合意で、日本は達成に向け貢献する姿勢を明確に示した。

 しかし、それを実現する考え方には問題がある。

 一つは、いますぐにできる政策や技術を用いず、実用化のめどもたっていない技術に頼ろうとしていることだ。

 地球温暖化の進行は不可逆である。平均気温が上昇すれば、人為的に下げるのは難しい。将来、画期的な技術が開発されて温室効果ガス排出がゼロになったとしても、進んでしまった気温上昇を回復させるのは不可能だ。

 提言は、空気中のCO2を回収して貯蔵する技術や、空気からメタンなどを抽出する技術、水素エネルギーのコスト低減などが重要だとしている。

 いずれも実用化にはほど遠いのが実情だ。地震国の日本では、CO2の回収・貯蔵に適した場所を見つけることも難しい。

 次世代原子力発電や、宇宙での太陽光発電も盛り込まれているが、まだ構想の段階だ。

 一方で、CO2の排出に課税する炭素税などには「専門的な議論が必要」とするにとどめた。

 CO2排出が多い石炭火力発電でも「依存度の低減」というあいまいな表現にとどまった。

 いずれも、これまで反対してきた経済界への配慮が明らかだ。

 炭素税は欧州連合(EU)や米国の一部の州で効果を上げている。いますぐ導入できるのに、提言は先送りをよしとしたに等しい。

 政府は「2050年に80%削減」という目標を持っているが、提言は「今世紀後半の早い時期に実質ゼロ」とするにとどめた。

 国連機関や環境NGOなどは「50年に実質ゼロにしないと、生態系や経済に深刻な影響が起きる」と指摘している。日本の態度は本気度が疑われる。

 大胆な長期的目標の設定と手持ちの政策や技術の深掘りを同時に進める必要がある。 (京都新聞 2019年04月10日掲載)